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黄海のアサリ漁業の取り組みが第4回ジャパン・サステナブルシーフード・アワードを受賞!

この記事のポイント
サプライチェーン上の関係者の協働により、中国で漁業改善プロジェクトを通じて初めてMSC漁業認証の取得を実現した、黄海のアサリ漁業。2022年10月19日、この取り組みが『第4回ジャパン・サステナブルシーフード・アワード』のコラボレーション部門で、チャンピオンとして表彰されました。丹東泰宏食品有限公司、株式会社ニチレイフレッシュ、WWF中国、WWFジャパンによる協働の取り組みが高く評価され、今回の受賞につながりました。
目次

アサリ漁業改善プロジェクト

水産資源や海洋環境に配慮し適切に管理された持続可能な漁業への転換を目的とした、中国・黄海沿岸域でのアサリ漁業改善プロジェクト。

中国遼寧省東港市の水産加工会社である丹東泰宏食品有限公司、同社からアサリを調達する株式会社ニチレイフレッシュ、WWF中国、WWFジャパンの4団体が協働し、持続可能な漁業の国際認証であるMSC(Marine Stewardship Council:海洋管理協議会)認証の漁業認証規格を満たすために改善に取り組みました。

プロジェクトの活動地域
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プロジェクトの活動地域

プロジェクトの活動地域である鴨緑江河口域は、アサリの主要な生産地であるとともに、渡り鳥をはじめとした多様な生きものの生息地として、豊かな生態系がつくられている場所です。

しかし、中国でのアサリ生産量の拡大や黄海沿岸域での開発による干潟面積の減少などにより、アサリの資源や沿岸の自然環境への影響が懸念されてきました。

そこで、丹東泰宏食品、ニチレイフレッシュ、WWF中国、WWFジャパンの4団体は、2016年にアサリ漁業の「漁業改善プロジェクト」を開始。

MSC漁業認証規格の3つの原則(資源の持続可能性、漁業が生態系に与える影響、漁業の管理システム)にもとづき予備審査を行ない、洗い出された課題に協力して取り組みました。

MSC漁業認証規格を理解し改善の作業を行うことは容易ではなく、計画通りに進まないこともありましたが、行政や研究機関を含む幅広い関係者と協力関係を構築するとともに、進捗や課題について関係者で話し合う場を定期的に設けたことで作業が進展。

その結果、MSC漁業認証の取得が見込める水準にまで改善が進み、2020年1月に、アサリ漁業がMSC本審査入りを果たしました。

プロジェクト関係者との会議。中国ではMSC漁業認証のような漁業の国際認証の取得例が少なく、理解や実際の漁業の改善には多くの時間と関係者の協力が必要とされました。
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プロジェクト関係者との会議。中国ではMSC漁業認証のような漁業の国際認証の取得例が少なく、理解や実際の漁業の改善には多くの時間と関係者の協力が必要とされました。

MSC漁業認証の取得

新型コロナウイルスの影響を受け審査スケジュールが大幅に遅延しましたが、2021年9月21日、ついにアサリ漁業がMSC漁業認証を取得。

2022年3月には、日本でもこのMSC認証あさりが使われた製品の販売が始まり、消費者が普段の買い物でも、サステナブルなアサリを入手できるようになりました。

MSC漁業認証を取得する漁業の数は、欧米を中心に増加している一方、アサリ漁業の現場である中国を含むアジア地域では、まだまだ十分ではありません。

現地の漁業者や加工会社だけでは認証取得や取得に向けた改善を進めることが困難な場合も多く、サプライチェーン上の関係者の協働が重要となっています。

この鴨緑江河口域でのアサリ漁業のMSC漁業認証の取得は、漁場から加工、商品までをつなぐ中国と日本のサプライチェーン上の関係者の協働により、中国で漁業改善プロジェクトを通じて実現した、初めての事例です。

これが優良事例として、中国やその他のアジア諸国を中心に、同様の取り組みが広がっていくことが期待されます。

漁獲されたアサリ
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漁獲されたアサリ

ジャパン・サステナブルシーフード・アワード

そしてこの、「中国・黄海沿岸域での漁業改善プロジェクトを通じたあさりのMSC漁業認証の取得」が、2022年10月19日、『第4回ジャパン・サステナブルシーフード・アワード』のコラボレーション部門でチャンピオンとして表彰されました。

『ジャパン・サステナブルシーフード・アワード』は、ジャパン・サステナブルシーフード・アワード実行委員会※1が主催し、日本でサステナブル・シーフードに向けた動きをより一層活性化させることを目的に、その年に功績を残した優れた取り組みを表彰するもの。

「リーダーシップ部門」、「コラボレーション部門」、「U-30(30歳未満)部門」の3つからなり、それぞれの部門で最も優れたプロジェクトがチャンピオンとして表彰されます。

今回のコラボレーション部門では、丹東泰宏食品有限公司、株式会社ニチレイフレッシュ、WWF中国、WWFジャパンの4団体の協働による取り組みが高く評価され、チャンピオンとなりました。

関係者の協働による漁業改善プロジェクトを通じた持続可能な漁業の実現は、持続可能な開発目標(SDGs)の「14 海の豊かさを守ろう」をはじめ、「12 つくる責任 つかう責任」や、「17 パートナーシップで目標を達成しよう」にも貢献するものであり、持続可能な未来を築くためにも欠かせません。

WWFは引き続き、このアサリ漁業のような生産現場での取り組みを含め、水産物の持続可能な生産と消費の拡大を推進していきます。

第4回ジャパン・サステナブルシーフード・アワード授賞式でチャンピオントロフィーを受け取る、株式会社ニチレイフレッシュの國田氏(写真右)と吉原氏(写真中央)
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第4回ジャパン・サステナブルシーフード・アワード授賞式でチャンピオントロフィーを受け取る、株式会社ニチレイフレッシュの國田氏(写真右)と吉原氏(写真中央)

※1ジャパン・サステナブルシーフード・アワード実行委員会:ASCジャパン、MSCジャパン、セイラーズフォーザシー日本支局、公益財団法人世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン)、株式会社シーフードレガシー

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