© naturepl.com _ Enrique Lopez-Tapia _ WWF

報告書『ゴーストギアの根絶に向けて~最も危険な海洋プラスチックごみ』(日本語版)を発表

この記事のポイント
「ゴーストギア」とは、海に流出した漁網や釣り糸など、多くがプラスチックでできた漁具のこと。ペットボトルなどに代表される海洋プラスチックごみの中でも、海洋生物に最も危険を及ぼしているとされています。海に流出しているゴーストギアは年間50万~100万トンにものぼり被害も深刻であるものの、特に対策が遅れていることから、WWFは2020年10月、このゴーストギアがもたらす問題をまとめた報告書を作成。今回、その日本語版を公開しました。
目次

最も危険な海洋プラスチック、ゴーストギア

世界の人口増加に伴う、水産物に対する需要の高まりを受け、漁業で使用される漁業用ロープ・漁網・仕掛けなどの漁具も増えています。

それと同時に、さまざまな漁具が海洋に放棄、逸失そして投棄されるようになりました。

この海洋に流出したプラスチック製の漁具は「ゴーストギア」と呼ばれ、無差別に海洋生物を捕獲する「ゴーストフィッシング」を引き起こすことで、海洋生物や海洋生態系に深刻な被害をもたらすだけでなく、社会や経済にも悪影響を与えています。


このように最も危険な海洋プラスチックであるゴーストギアですが、残念ながら問題の実態とその解決策については、まだほとんど知られていません。

そこでWWFは今回、報告書『ゴーストギアの根絶に向けて~最も危険な海洋プラスチックごみ~』の日本語版を発表しました。

この報告書は、下記の点に加え、最新の情報や対策のための活動事例などを網羅的にまとめた日本語では初めての資料となります。

●ゴーストギア問題とその原因
●解決に向けた効果的なアクション
●現状の法的枠組みが抱える課題と国際協定の必要性
●各関係主体が取り組むべきこと


国や地域で水産業振興や環境問題に取り組む行政の方、漁業者や漁業協同組合、水産会社で直接・間接に漁具を扱う関係者の方、さらに普段から魚を消費しプラスチック製品に囲まれている一般の方々にも、ぜひご活用いただければと考えております。

ダウンロードはこちら

報告書『ゴーストギアの根絶に向けて~最も危険な海洋プラスチックごみ~』(日本語版)(PDF形式:4MB)

【参考情報】報告書の概要より

ゴーストギアとそれがもたらす被害

毎年1,100万トンが海に流出し、すでに1億5,000万トン以上が存在するといわれている海洋のプラスチックごみ。
これらのうち、少なくとも10%が漁業用ロープ・漁網・仕掛けなど漁業由来の海洋プラスチックごみであると推定されています。

漁具の多くはプラスチックで作られており、一旦流出すると、長い間原型をとどめ続けます。この流出した漁具に絡まったり、捕まったりした魚類、海洋哺乳類、海鳥、ウミガメなどは、窒息やケガ、衰弱などにより、多くが苦しんで死んでいくことになります。

また、ゴーストギアは漁業者に経済的なダメージを与え、航海の安全も脅かすなどさまざまな悪影響をおよぼすことがわかっています。

© Brian J. Skerry _ National Geographic Stock _ WWF

ゴーストギアの発生原因と解決策

ゴーストギアは、大きく分けて3つの原因で発生します。漁具がコントロール不能になることで起きる「逸失」、意図的な海への「投棄」、時に法令違反などを伴う「放棄」です。

ゴーストギア問題に効果的に対処するために、政府・自治体、漁業者、漁業団体、水産会社等の関係者は、まず漁具流出を予防することに最優先で取り組み、さらにゴーストフィッシングを抑える漁具設計などで被害を軽減し、併せて状況に応じた流出漁具の回収措置を実施する必要があります。

© WWF Mexico

ゴーストギアの根絶に向けて

ゴーストギア問題の解決に向け、WWFでは、関連団体と協働して、国際組織や各国政府に働きかけ、ゴーストギアを含むプラスチックごみの発生抑制と対策を行なうための包括的な国際協定や、法制度の制定を目指しています。

さらに、国内の沿岸都市を対象に、自治体や漁業団体、リサイクル企業らと協働し、漁具を適正に資源循環させることにより、ゴーストギアの発生抑制を目指すプロジェクトを行なってまいります。

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