森林セミナー 「木材デューデリジェンスと改訂版林産物チェックリストの活用」開催報告
2021/08/11
- この記事のポイント
- WWFジャパンでは、2021年7月8日、森林環境に配慮した木材や製品の原材料の調達方針を策定済または策定を予定する企業を対象としたセミナーを開催しました。環境とサステナビリティに配慮した調達を行なうには、どのような点に注意し、企業として取り組む必要があるのか。木材の調達に関わる企業を中心に、60名以上の方に向け、ポイントとなる観点を紹介するとともに、その判定に利用できるツール「WWF林産物チェックリスト」の改訂版を紹介しました。
サステナブル調達の最初の一歩としての「調達方針」
これからの責任ある企業が取り組むべき、サステナブル(持続可能)な原材料の調達。
その最初のステップとして、自社がどのような考え方で調達を行なうかを「方針」として定め、明示する企業が増え続けています。
とはいえ、「調達方針」さえ策定すれば良いわけではありません。
方針を出した後、掲げた調達目標を実施し、実績を評価して開示まで行なう。こうした、透明性のある運用が、ますます求められるようになっています。
実際、世界各地で深刻な森林破壊が進む中で、森林資源を扱うビジネスを続けていくためには、その持続可能な利用は欠かせません。
こうした観点から、投資家や金融機関も今後、さらに企業の調達方針や、その達成状況に注目していくことになるでしょう。
また、森林保全活動の現場においても、林産物の消費と生産をいかにサステナブルなものに改善していけるかが、大きなカギとなっています。
「木材デューデリジェンス」を知るセミナーを開催
企業が調達方針を出した後、実際に運用をする際に求められるのが「木材デューデリジェンス」です。
これは、企業が木材や林産物に由来する製品の原料を調達するにあたり、生産地の森林生態系や、その地域に住む人々の暮らしに悪影響を及ぼしていないか、法律違反がないか、といった、さまざまなリスクを確認し、もしリスクがあれば適切な方法で対応する、というリスク管理の一連の流れを指します。
しかし、木材などの調達方針は策定しても、このデューデリジェンスが正しく理解できておらず、実施まで確実に行なえていない企業は、少なくありません。
そこで、WWFジャパンは2021年7月8日、デューデリジェンスに使えるツールとして、WWF ジャパンが作成した「改訂版WWF林産物チェックリスト」について紹介、解説する、オンライン・セミナーを開催。
さらに、実際に本チェックリストを社内の木材評価に活用されている実践例として、双日株式会社、ミサワホーム株式会社の2社より、お取り組みをご紹介いただきました。
また最後には、近年国際的にも注目され、拡大を見せている、ESG投資などファイナンスの分野から、各企業に求められる情報の開示要求に対して、本チェックリストがどのように役立ちうるのか、という、新しい切り口から話題を提供しました。
当日参加された方は、木材の調達に関わる企業を中心に60名以上。
WWFはこうしたチェックリストなどを活用しながら、今後も木材を中心にさまざまな林産物を取り扱う企業に対し、デューデリジェンスをすすめていくことを求め、生産現場やサプライチェーンの改善を通じた、世界の森林保全に取り組んでゆきます。
※林産物チェックリストはページの下の部分よりダウンロードいただけます
プログラム
WWFジャパン森林セミナー木材編
木材デューデリジェンスと改訂版林産物チェックリストの活用
第1部
講演「『サステナブル調達』を目指す木材DDとは」
WWFジャパン森林グループ:相馬真紀子(講演資料①)
第2部
講演「『改訂版WWF林産物チェックリスト』の解説と使い方」FSC主任審査員 小川 直也 氏(講演資料②)
第3部
企業の実践例① 双日株式会社 生活産業・アグリビジネス本部 林産資源部 部長補佐 中島祐二 氏(講演資料③)
企業の実践例② ミサワホーム株式会社 調達部部長 野村幸史 氏(講演資料④)
第 4 部 『改訂版WWF林産物チェックリスト』で担保・確認できること WWFジャパン 自然保護室 橋本務太(講演資料⑤)
【イベント概要】
タイトル: WWFジャパン森林セミナー木材編 木材デューデリジェンスと改訂版林産物チェックリストの活用
日時:2021年7月8日
場所:オンライン開催
参加者数:約60名
主催:WWFジャパン
参考情報「改訂版WWF林産物チェックリスト」について
WWFの「林産物チェックリスト」の第一版は、木材や紙製品などの林産物を扱う企業に、経済・環境・社会に配慮した管理がなされている森林に由来した、林産物の購入を通し、責任ある調達をしていただくことを目的に、2008年に策定されました。
チェックリストの仕組みは、林産物の出所となる森林を特定してトレーサビリティを確保し、その森林の管理内容を文書等でチェックし、点数換算して評価するというものです。
2021年に発表した改訂版では、第一版の基本的な考え方や評価の仕組みを踏襲しつつ、持続可能な森林認証の基準変更や、各国の新しい合法証明制度などの情報を追加。
世界の木材調達を取り巻く制度の変化などを、より反映させたものとしました。
WWFジャパンでは、今後も「林産物調達チェックリスト」を、サステナブルな木材調達に取り組む企業が、木材などの林産物についてデューデリジェンスを実施する際の、有効な参考情報として活用を広げていきたいと考えています。