FSCにこだわる理由は「誰も犠牲にしない家づくり」
2023/05/16
- この記事のポイント
- SDGs(Sustainable Development Goals)の14個のゴール達成にも貢献することから、近年急速に大手企業を中心に利用が広まる「FSC認証製品/木材」。愛知県一宮市にある株式会社エコ建築考房も、2019年に民間のモデルハウスとして日本で初めてFSC®️プロジェクト認証を取得。それ以降も年間約30棟建築する新築住宅全棟の構造材(ヒノキ部)をFSC認証木材に切り替え、さらに、FSC認証木材の普及をすすめるため、ブランド木材『東濃ひのき』の産地・東白川村を含む7者で『FSC認証材普及推進協定』を2019年12月に締結してFSC認証の普及推進をリードしています。
「つなぐの森 ハリプー」
やわらかな木のぬくもり
ほっと癒される木の香り
裸足で気持ちよさそうに走り回る子どもたち
愛知県一宮市にある、「つなぐの森 ハリプ―」という子どもの遊び場です。
ここはただの遊び場ではありません。とても「サステナブル」な遊び場です。
ハリプーに使われている木は、FSCという認証を得た森からやってきたもの。
FSC認証とは、森の環境を守り、そこで生きる人の暮らしにも配慮した、自然にやさしい木材の生産を証明する、いわばお墨付きで、持続可能な森林資源の利用をすすめる具体的な手段として、世界中で展開されています。
ハリプーが取得した認証は、「FSCプロジェクト認証」と呼ばれるもので、家や施設などの建設を一つのプロジェクトとみなして認証する仕組みです。
人も自然も犠牲にしない家づくり
FSC プロジェクト認証の遊び場「つなぐの森 ハリプー」を手掛けた株式会社エコ建築考房の喜多社長にお話を伺いました。
同社は、2019年から2022年末までの約3年間でFSCプロジェクト認証の住宅や施設を6件建てています。使われているのは、ブランド木材『東濃ひのき』の産地である岐阜県東白川村のFSC認証林で育てられたヒノキやスギをはじめとした国産無垢材。
なぜエコ建築考房はFSCにこだわるのか。
「関係する人々の幸せを考える企業でありたい、誰かの犠牲の上に成り立つ家づくりや会社づくりは継続しない」
という社の価値観に、自然やかかわる人の暮らしに配慮して持続可能な森林管理を目指すFSC認証が合致したと喜多社長は仰います。
世界でも数例しかない連続プロジェクト認証に挑戦!
エコ建築考房の挑戦は止まりません。2023年1月から設計・施工する年間約30棟の全ての新築住宅に、岐阜県・東白川村産のFSC認証木材を使用することも計画しています。これは、実現すれば世界でも有数の快挙です。
サステナビリティを追求するエコ建築考房の家づくりも、けっして平坦な道のりではないはず。紙製品ではずいぶん見かけるようになったFSCマークですが、木材製品ではあまり普及していません。
日本ではFSC認証林が少なく、認証木材も潤沢に出回っているとはいえない状況にあるため、FSCの建物を作りたい、と思っても、まだまだ簡単ではないのです。
FSC認証材の建物をつくろうと思ったら、森林を管理する人、加工する人など、さまざまなアクターの協力が不可欠です。
エコ建築考房は、2019年に東白川村を含む7者で『FSC認証材(R)普及推進協定』FSC普及連携協定を締結して、安定的なFSC木材の供給において協力できる体制を構築してきました。
協定には株式合会社 山共、東白川村、東白川村森林組合、東白川製材協同組合、後藤木材株式会社、株式会社 山西の7社が参加。
目にはみえない価値がある
森で木を育てる人たちから木材を加工する会社、建物をつくる人たちまで、皆の思いをつないで完成した家や施設には、木を育んでくれた森林や自然、生産・加工にかかわるすべての人への感謝の気持ちがあふれています。
しかしながら、ご紹介したこれらのFSC認証の建物に使われている木材がどれほど厳しい基準をクリアしているのか、地球環境や人権に配慮しているのか、残念ながら写真をみただけでは伝わらないかもしれません。
目には見えない価値を伝えるのはとても難しいことです。私たちが暮らす家や普段使う施設建設の裏舞台は、一般消費者にはなかなか見えないのですから。それでも、たとえ目にみえなくても、地球も人間もサステナブルに共存していくことを目指した家や施設をつくり続けてくださる方々をWWFジャパンは今後も応援していきます。