秋の風物詩サンマ 資源は枯渇状態であることが明らかに

この記事のポイント
秋の風物詩サンマ。価格も安価で庶民に味方であるサンマの資源量が「枯渇状態」であることが、2019年7月16日から18日に東京で開催された北太平洋漁業委員会(NPFC)にて明らかになりました。また、サンマ漁の規制強化に一定の進捗がみられたものの、未だ不十分です。WWFは早期に実効性のある資源管理措置の導入を求めます。

サンマの現状と資源管理について

サンマの生態

サンマ(Cololabis saira)は、日本から北米西岸に至る太平洋北部の亜寒帯海域に分布しています(図1)(※1)。

図1. サンマの分布域

図1. サンマの分布域

サンマの寿命は約2年、最大約40cmまで成長し、1年で成熟を迎え(体長約25cm)、冬に南方で数回産卵します(※2, 3)。その後、餌を求めて北上し、8月にはオホーツク海からサハリン東岸に到達した後、秋に再び南下します(南北回遊)。
また、東西方向にも回遊することも知られており、6~7月には日本のはるか沖合、東経155度~西経170度付近に多く分布していますが、秋以降には日本近海に回遊します。
ただし、北太平洋に分布するすべてのサンマが日本近海に回遊するわけではなく、東方沖合の公海域を南下する群もいると考えられています(※4)。

サンマの漁業

現在、日本、ロシア、台湾、韓国、中国およびバヌアツ漁船がサンマを漁獲しており(図2)、その大半は棒受網漁(図3)により漁獲されています。

図2. サンマの漁獲量および日本の漁獲割合の推移

図2. サンマの漁獲量および日本の漁獲割合の推移

図3. 棒受網漁

図3. 棒受網漁

サンマ漁は、1950年代にはすでに日本および韓国によって行なわれており、1960年代からは旧ソ連、1980年代末からは台湾も開始しました。
1990年代後半以降、日本のサンマの漁獲割合は徐々に低下し、現在は台湾が最も漁獲量が多く、次いで日本、中国の順となっています。
また、日本およびロシアは、主に自国の排他的経済水域(EEZ)内を漁場としているのに対し、台湾、中国およびバヌアツは公海域を漁場としています(※1)。

サンマの資源状況と資源管理措置

サンマ資源は、2015年に正式に発効した地域漁業管理機関である北太平洋漁業委員会(North Pacific Fisheries Commission:NPFC)によって管理されています(表1)(※1)。

表1. NPFCにおけるサンマ資源管理措置

表1. NPFCにおけるサンマ資源管理措置

2019年7月に開催された北太平洋漁業委員会第5回年次会合では、「サンマの資源量は枯渇状態である」とのNPFCサンマ小科学委員会からの報告(※5)を受け、サンマの総漁獲可能量が設定されました。しかし、設定された総漁獲可能量は、近年の漁獲量を上回る水準であり、サンマ資源保全のためには不十分です。

WWFの要望

この現状を受け、WWFはNPFCに関係する各国政府に対し、次の点について要望を行なっています。

  • 予防原則に従い、サンマ資源保全のために実効性のある総漁獲可能量を早急に設定すること
  • サンマ資源について、早期に限界管理基準値、目標管理基準値を合意し、それに基づいた漁獲管理方策を設定すること
  • 漁獲証明制度の実施と、トレーサビリティを確立すること

参考文献
(※1)国立研究開発法人水産研究・教育機構, 平成30年度国際漁業資源の現況
(※2)多紀保彦, 奥谷喬司, 近江卓, 食材魚貝大百科第2巻, 平凡社
(※3)Suyama, S., Kurita, Y., and Ueno, Y. 2006. Age Structure of Pacific saury Cololabis saira based on observations if the hyaline zones in the otolith and length frequency distributions. Fish. Sci., 72: 742-749.
(※4)Suyama, S., Nakagami, M., Naya, M., and Ueno, Y. 2012. Migration route of Pacific saury Cololabis saira inferred from the otolith hyaline zone. Fish. Sci., 78: 1179-1186.
(※5)NPFC-2019-SSC, 4th Meeting of the Small Scientific Committee on Pacific Saury REPORT

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