大西洋クロマグロに過剰漁獲と犯罪的行為の疑い
2018/11/12
発覚した大規模な違法行為
今回、発覚したのは、約15億円にも及ぶとみられるクロマグロ(本まぐろ)の違法流通が多年にわたり続けられていた、という疑惑でした。
これにかかわっていたとされるのは、スペインの企業とフランス、イタリアの漁港、そしてマルタの蓄養業者など。
いずれも、大西洋クロマグロの資源保護と漁業管理を決めるICCAT(大西洋マグロ類保存国際委員会)の加盟国での出来事です。
もし発覚した内容が事実であるならば、毎年2,500トンに及ぶ大西洋クロマグロが、不適切な漁業管理のもと、漁獲され取引されていたことになります。
さらに、この数字は、EUの2017年の漁獲枠の実に20%に匹敵する規模となります。
この問題について、WWF地中海プログラムの大西洋クロマグロリーダーであるアレサンドロ・ブッジは次のように述べています。
「EU域内で、何年にもわたり、これほどの未報告クロマグロが違法に取引されていたとすれば、ひどい話です。
EUとすべての漁業国は、こうした監視体制の抜け穴を無くし、犯罪的行為を行なうブラックリストの漁船から漁業ライセンスを取り下げ、また効果的な罰則を導入することで、違法行為を根絶やしにすべきです。
また、海で漁獲されるクロマグロの本当の記録がしっかり整うまでは、現行の資源回復計画における漁獲増枠は一旦停止すべきです」
この問題は、2018年11月12日から19日まで、クロアチアで開催されるICCATの第21回特別会合での議論にも、大きな影響を及ぼすことになるでしょう。
問われた漁獲枠拡大の是非
2017年、ICCATの年次総会では、大西洋クロマグロの資源量が回復傾向に転じたとする見解を受け、2020年までに漁獲枠を過去最高の3600トンに増加させることを決定。この決定を、WWFは時期尚早であるとして強く批判しました。
そうした状況の中で、今回のような犯罪行為の疑惑が発覚したのは、重大な問題です。
過去に、きわめて危機的な状況にあった大西洋クロマグロは、過去10年間の資源回復をめざす努力により、なんとか回復に転じていますが、この問題はこうしたこれまでの積み重ねをも、大きく損なうものとなる可能性があります。
WWFはまた、過剰漁獲が大きな問題となっている熱帯マグロ類についても、科学者が2033年に資源が枯渇する危険性を指摘したことについて、深刻な懸念を抱いてきましたが、これについても過剰な漁獲が続いており、予断が許されません。
WWFはEUおよびその他の加盟漁業国に対し、将来の漁獲枠増加に際しては、より厳しい操業の管理を行なうよう求めるとともに、さらに悪質な違反を犯した企業に対しては、厳しい罰則を与えるべきと考えます。
また、地中海クロマグロの最大市場である日本が、流通関係者も含めて、いまだなくならない未報告漁獲やロンダリングの疑惑を完全に排除するよう、マグロ製品を市場に供給するサプライヤーや、ICCAT加盟国に対して、厳しく働きかけることを強く期待します。