珍重されるイッカクの牙 一本のお値段は!?


事務局の最寄り駅まで乗る朝の満員電車。
今朝方、その中で揺られながら、「自分の前歯の一本が、自分の身長と同じくらい長かったら、どうなるだろうか?」などという意味のない想像をしてみました。

考えていたのは他でもない、イッカクの牙、の話です。

イッカクは北極圏の海に生息する小型のハクジラの一種で、オスは前歯の一本が異様に長く、ねじれながら伸び、体長の3分の2くらいの長さになることがあります。

頭から生えているように見えるので、よく「角」と言われますが、これは歯、です

 

 

この牙を、何のために使っているのか?

答えはいまだ明らかになっておらず、進化と生命の謎の一つといえるかもしれません。

そんなイッカクの牙について、思わぬところで情報を目にしました。

先日、日本国内での象牙取引の違法事例が報道されましたが、この件で書類送検された古物商の買取広告に、このイッカクの牙が2点、載っていたのです。

イッカクの長い牙。極北の象牙、とも呼ばれ、象牙などのように、彫刻の原材料になることもありますが、それほど確認例が多くありません。

 

買取事例の値段はそれぞれ58万、64万円!と、かなりの高額。

大きさは分かりませんでしたが、おそらく根元からと思われるそのままの牙でした。

全体量はそれほど多くはないと見られていますが、日本がイッカクの牙を輸入していること、そしてこうした骨董などの扱いで売買されていることは以前から知られています。

しかし、この牙が買われた後、どう使われているのか? これについては、あまり情報がありません。(ご存知の方がいらっしゃいましたら、是非お知らせを!)

イッカクのメス。最近オスのイッカクが牙を振って獲物の魚をノックアウトし、パクリと食べる貴重な映像が撮影され、話題呼びました。が、仮にそれが役割なのだとしたら、なんでメスには牙がないのだろう??

 

いずれにしても、こうした取引が野生のイッカクの生息を脅かすようなことがないようにしてゆかなければなりません。

長い牙の謎が解き明かされる時が来るかもしれませんが、その日まで野生のイッカクたちが北極の海で元気に生き続けられるように、頑張ってゆきたいと思います。(広報担当 三間)

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自然保護室(コンサベーションコミュニケーション グループ長)
三間 淳吉

学士(芸術学)。事務局でのボランティアを経て、1997年から広報スタッフとして活動に参加。国内外の環境問題と、保全活動の動向・変遷を追いつつ、各種出版物、ウェブサイト、SNSなどの編集や制作、運用管理を担当。これまで100種以上の世界の絶滅危惧種について記事を執筆。「人と自然のかかわり方」の探求は、ライフワークの一つ。

虫や鳥、魚たちの姿を追って45年。生きものの魅力に触れたことがきっかけで、気が付けばこの30年は、環境問題を追いかけていました。自然を壊すのは人。守ろうとするのも人。生きものたちの生きざまに学びながら、謙虚な気持ちで自然を未来に引き継いでいきたいと願っています。

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