COP21より 気候変動がもたらす「損失と損害」をめぐって
2015/12/03
パリの国連気候変動会議「COP21」の会場より、温暖化担当の小西です。
会議もはや3日目。この日も、テーマに分かれた分科会ごとに、合意文書の草案づくりが続けられました。
その争点の一つに、「損失と損害」があります。
地球温暖化の分野では、人間社会や生物多様性が被る、取り返しのつかない「損失」(loss)と、道路や堤防など損壊といった修復可能な「損害」(damage)、2つの定義があります。
これまで、世界の温暖化対策は、気候変動を抑える「緩和」と、その影響を軽減する「適応」の2本柱で進められてきましたが、現在までのところ、どちらの取り組みも不十分で、各地で温暖化が進行。被害を防ぎ切れない状況が生じています。
産業革命以降の平均気温の上昇が、まだ1度に満たない現在でさえ、これだけの被害が起きているのですから、さらに2度、3度の上昇を許せば、危機が深刻化することは確実です。
そのため、特に強く気候変動の影響を受けている太平洋の島国や、後発開発途上国、アフリカ諸国などは、「緩和」「適応」に次ぐ第3の柱として「損失と損害」を合意に含めるよう求めてきました。
一方、先進国は、補償や回復にかかる資金の拠出が増えることを警戒し、この問題に消極的な姿勢を貫いてきたため、一つの対立の構図が出来ていたのです。
しかし、COP21では、その対立を克服するきざしが見えました。
冒頭の首脳級会合で「小国も大国も、富める国も貧しい国も、気候変動の影響を逃れられる国はない」と語ったオバマ大統領の演説に代表されるように、すでに「損害と損失」が起きており、その規模がさらに拡大することへの懸念に、多くの首脳が言及したのです。
損失と損害を防ぐには、削減目標の引き上げと、適応に必要な資金の拠出も欠かせません。
この課題は、COP21の成否を決する大きな要素です。
COPを成功させるために、各国はその現実を直視し、対立を乗り越え、歩み寄ることが求められています。