世界は一つになれるのか?国際社会が抱える「差異化」の問題
2015/12/05
パリで行なわれている国連気候変動会議「COP21」の会場より、温暖化担当の小西です。
1週間にわたる事務官レベルの交渉の末、金曜日の朝に「パリ合意」の文書の草案がまとめられました。
この草案は、予定通りに行けば、土曜日の「ダーバンプラットフォーム作業部会」の総会で採択され、来週からは、上位の意思決定機関であるCOP(締約国会議)に場を移し、各国閣僚も含めて、いよいよ最終合意へ向けて議論されることになります。
しかし、この草案にはまだ多くの争点が残されています。背景にあるのは、「差異化」の問題です。
これまで国連の下で進められてきた、国際社会による地球温暖化対策では、「気候変動枠組条約」や「京都議定書」がつくられた1990年代の世界情勢を受け、196の国々を、先進国と途上国に二分し、それぞれの役割を規定していました。
先進国が排出削減義務を負い、途上国の温暖化対策に対する資金や技術を提供する、という取り決めも、こうした当時の事情を反映したものです。
しかし、その後の20年間に、中国やインドなどの新興国が経済成長を遂げ、世界は大きく変化しました。
そのため、京都議定書に続く新しい温暖化防止のための枠組みでは、こうした変化を受け、全ての締約国をどう「差異化」するかが争点となってきました。
それぞれの国がどれだけ温室効果ガスの削減や、資金支援を行なうのか。それをまさに差異化し、規定するのが「パリ合意」の条文なのです。
京都議定書から18年。これからも世界の国々の間の勢力図は、変化し続けるでしょう。
ですが、地球温暖化への対応は、国家ではなく、人類の課題です。
世界が一つになって、長きにわたり継続可能な温暖化対策を実現するためには、各国の国情に応じた責任と能力を問い、実効性と柔軟性を持った体制を作ることが必要です。
パリ合意には、その起点となることが求められています。