タンカー事故と渡り鳥と電気の話


先日、東京湾で船舶が衝突し、タンカーが沈没するという事故がありました。幸い死傷者は無かったとのことでしたが、ドキリとさせられるニュースでした。

というのも、この種の船舶事故、特にタンカーの事故は、積んでいる油の流出を引き起こし、海の生態系に悪影響を及ぼすことが多々あるからです。

特に今は冬。
夏の間をシベリアなどで過ごしたカモやカモメなど渡り鳥たちが、東京湾にも数多く渡ってきます。

こうした水鳥は、身体に油が付くと羽毛の保温性が失われ、また油を飲み込むと内臓疾患を起こし、弱ったり死んでしまうことがあります。

世界ではいくつも例がありますが、大規模な流出事故では、何千、何万という水鳥や野生生物が犠牲になる例も珍しくありません。

報道によれば、今度の事故では、タンカーも大型ではなく、油の流出も洋上の限られた範囲にとどまったということですが、規模が小さければ被害が少ないとは限りません。

多摩川の河口のような、鳥が集まりやすい浅い水辺で事故が起きていたら、また違ったことになっていた可能性もあります。

ニュースでは自然への影響について言及しているものは、残念ながらありませんでしたが、こうした点についても、注意をしてゆきたいものです。

また、このような事故が起きると、日本での暮らしが、いかに多くの物資を海外に頼っているかも考えさせられます。

電気やガソリンなどの石油に頼ったエネルギーもそれは同じ。

今年の4月には、電力の自由化がスタートしますが、そうした機会を利用した選択も、渡り鳥をはじめ、さまざまな生きものたちに繋がっていることを、意識してゆかねばと思います。

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自然保護室(コンサベーションコミュニケーション グループ長)
三間 淳吉

学士(芸術学)。事務局でのボランティアを経て、1997年から広報スタッフとして活動に参加。国内外の環境問題と、保全活動の動向・変遷を追いつつ、各種出版物、ウェブサイト、SNSなどの編集や制作、運用管理を担当。これまで100種以上の世界の絶滅危惧種について記事を執筆。「人と自然のかかわり方」の探求は、ライフワークの一つ。

虫や鳥、魚たちの姿を追って45年。生きものの魅力に触れたことがきっかけで、気が付けばこの30年は、環境問題を追いかけていました。自然を壊すのは人。守ろうとするのも人。生きものたちの生きざまに学びながら、謙虚な気持ちで自然を未来に引き継いでいきたいと願っています。

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