【動画あり】ゾウの命も、森の命も
2017/06/23
こんにちは! WWFインドネシアのワンダです。
私はスマトラ島中部にあるテッソ・ニロ国立公園で、ゾウパトロール隊専属のゾウ専門医として活動しています。
ゾウパトロールの活動は、訓練を受けたゾウのチームで国立公園をパトロールし、違法な開発を監視しながら、集落に近づく野生のスマトラゾウを森へ帰らせる取り組みです。
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パトロールに出るゾウとゾウ使いたち
インドネシアでは、違法なアブラヤシ農園の開発などによって、すみかの森を失った野生のゾウが、集落の近くに現れ、農作物を荒らしたりする事故が、しばしば起きています。
住民が仕掛けた毒や罠でゾウが死ぬこともあり、森林破壊と人、野生生物の被害が、負の連鎖になっています。
広大なスマトラの島に、わずか数千頭しか生き残っていないといわれる、絶滅寸前のスマトラゾウにとって、これは大変な問題。
そのため、ゾウを傷つけることなく森へと返す、ゾウパトロールの取り組みが行なわれているのです。
私の仕事は、このパトロール隊の8頭のゾウの健康管理。
ゾウ使いだけで健康状態を見るのは難しいので、栄養管理から寄生虫の検査まで、ゾウに仕える気持ちで日々面倒を見ています。
大変な仕事ですが、嬉しいこともあります。
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ゾウの寄生虫を調べるワンダさん。スマトラゾウの危機を知ったことが、ゾウの専門医になる道を選んだきっかけでした。今日も現場での大変な取り組みを続けています
この6月には、パトロール隊のメスのゾウ「リサ」が生んだ、仔ゾウの「リンバニ」が、無事に1歳になりました!
リンバニが生まれた朝のことは、忘れられません。
約22カ月、地上の生物の中で最も長い妊娠期間を経て、その瞬間はやってきました。
そのリンバニも、3月から時折リサについてパトロール隊と共に森を巡回しています。
森を守る頼もしいパトロール隊員のゾウたち。獣医として、これからも彼らを支えてゆきたいと思います。(聞き取り、編成:自然保護室 伊藤)
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お母さんのリサと、赤ちゃんのリンバニ。生まれた時は119キロでした
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お利口なリンバニは、薬をバナナに隠して処方しても、器用にバナナだけ食べてしまいます。薬を嫌がるのは、人の子供と同じです