立ち上がるアラブの若者たち


COP18の開催国カタールより、温暖化担当の小西です。
カタールという国、皆さんご存知でしょうか。

秋田県ほどの国土に世界有数のエネルギー資源が眠る国。石油の埋蔵量は世界14位、天然ガスはロシアに次いで世界2位、液化天然ガスの輸出量では世界1位を誇っています。

人口は約170万人の大半が外国人労働者で、カタール人は30万人ほど。IMF(国際通貨基金)によれば、2011年の経済成長率は18.82%と世界1位で、1人あたりのGDPもルクセンブルクに次いで2位と、17位の日本の倍以上です。そのため、1人あたりの温室効果ガスの排出量も世界1位(日本の約4倍です)。

これまでの国際交渉で、カタールを含む産油国は、温暖化対策の進展による石油販売収入の低下を保障する要求はしても、削減目標はもちろん、排出データさえ提出してきませんでした。

しかし今回、湾岸産油国で開催された初めてのCOPは、地球温暖化を止めたいと願う多くの若者たちを活動に駆り立てました。アラブ世界で初めて15か国の100を超える団体がAYCM(アラブ・ユース・気候運動)というネットワークを結成したのです。

各国からドーハのCOP18会場にやってきた、およそ100人のAYCMの若者たちは、カタールを含むアラブ諸国に削減目標を提出し、COP18を成功させるよう求めて活動しています。

11月29日には、次期FIFAワールドカップの招致にちなんでサッカー試合を模したアクションも展開。世界のメディアの注目を集めました。

こうした動きの背景には、2010年のチュニジアに端を発した「アラブの春」があります。歴史を変えた市民の力が、温暖化に対する国の姿勢や政策にも、確かに及ぼうとしているのです。

これまで石油で身を支えてきた中東の国々。ここで今、若者たちが新しい時代の扉を開こうとしています。

 

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NGOのニュースレターecoを配布するアラブのユースたち。こうしたさまざまなボランティアも行なっています。

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アラブ世界で初の活動だけあって世界のメディアが注目。

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AYCMによるパフォーマンス。「市民社会」というキッカーが「気候変動」というゴールキーパーを倒すために「削減目標」というボールを蹴り、みごとゴールを決める!というもの。

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専門ディレクター(環境・エネルギー)
小西 雅子

博士(公共政策学・法政大)。米ハーバード大修士課程修了。気象予報士。昭和女子大学特命教授、京都大学院特任教授兼務。
中部日本放送アナウンサーなどを経て、2005 年に国際 NGO の WWF ジャパンへ。専門は国連における気候変動国際交渉及び国内外の環境・エネルギー政策。2002 年国際気象フェスティバル「気象キャスターグランプリ」受賞。環境省中央環境審議会委員なども務めている。著書『地球温暖化を解決したい―エネルギーをどう選ぶ?』(岩波書店 2021)など多数。

世界197か国が温暖化対策を実施する!と決意して2015年に国連で合意された「パリ協定」の成立には感動しました!今や温暖化対策の担い手は各国政府だけではなく、企業や自治体・投資家・それに市民です。「変わる世の中」を応援することが好きな小西です♪

人と自然が調和して
生きられる未来を目指して

WWFは100カ国以上で活動している
環境保全団体です。

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