クジラドリの不思議


クジラドリ。全長25メートル、その名の通りの巨大鳥!

というのは冗談でして、これは主に南大洋とその周辺に生息する海鳥です。大きさは25センチくらい。

繁殖期でない時期には巣を遠く離れて洋上を移動する、小柄ながらも広い生息域を持つ鳥で、しばしば大群が見られるとのこと。名前の由来も、そうした群がよくクジラの周りで見られるため、だそうです。

ですが調べてみると、一つ、クジラにも通じた面白い特徴があることが分かりました。

この鳥、口の中に「ヒゲ」があるというのです。

このヒゲは、ヒゲクジラのそれと同じく、海中の動物プランクトンを濾して食べるためのものらしい。

しかも、6種いるクジラドリ類(近縁のアオミズナギドリを入れると7種)は、いずれも主食とするプランクトンの種類が、ある種はオキアミ類の1種、別の種はヨコエビの仲間、またカイアシ類が主と、微妙に異なっており、しっかりと「食い分け」ができている。

さらには、それに合わせるかのように、クチバシの形にも違いが見られ、最大のものと最小のものでは、その幅に3倍近い差があります。

一見したところ、クジラドリ類には大きさ、模様などにほとんど差が無く、おそらく野外では見分けのつきにくい鳥だと思われますが、そんな「多様性」を秘めていたとは!

クジラドリ類は、世界に約80種が知られるミズナギドリ科の鳥ですが、いかなる理由があって、ダーウィンフィンチにも劣らない、ユニークな進化を遂げたのか? もしかしたら、豊かな南の海の中に、その答えはあるのかもしれません。

ちなみに、このクジラドリ、現在私たちが保全プロジェクトを行なっている南米チリ南部の海も、2種ほどが分布しているようです。

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自然保護室(コンサベーションコミュニケーション グループ長)
三間 淳吉

学士(芸術学)。事務局でのボランティアを経て、1997年から広報スタッフとして活動に参加。国内外の環境問題と、保全活動の動向・変遷を追いつつ、各種出版物、ウェブサイト、SNSなどの編集や制作、運用管理を担当。これまで100種以上の世界の絶滅危惧種について記事を執筆。「人と自然のかかわり方」の探求は、ライフワークの一つ。

虫や鳥、魚たちの姿を追って45年。生きものの魅力に触れたことがきっかけで、気が付けばこの30年は、環境問題を追いかけていました。自然を壊すのは人。守ろうとするのも人。生きものたちの生きざまに学びながら、謙虚な気持ちで自然を未来に引き継いでいきたいと願っています。

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