がんばれ仔ヒョウ!野生復帰に向けたリハビリ


※2023年6月26日をもって、WWFロシア(Vsemirnyi Fond Prirody)はWWFネットワークから離脱しました。

自然保護室の川江です。
先日、WWFジャパンが支援する、極東ロシアのヒョウのリハビリ施設を訪問してきました。

この施設では今、密猟者の罠にかかり前脚の指を失った1歳の仔ヒョウが保護されています。

以前、この悲劇をお伝えしたブログでは、仔ヒョウが再びロシアの森に戻れる可能性はほぼないでしょうと申し上げたのですが、なんと5か月間におよぶリハビリの結果、野生復帰の可能性が出てきました!。

前脚の手術を受けた後、この仔ヒョウは人と接することなく、再び狩りの能力を取り戻すために、3.5ヘクタールの専用の囲いの中でリハビリを受けていました。

そして、5か月の間に走ったり、木登りができるまで回復。

さらに、この仔ヒョウは、母ヒョウから狩りの仕方をしっかり教え込まれていたようで、ノウサギやシカを自分の力で捕れるまでになりました。

早ければ今月中には、専門家がこの施設を訪問し、仔ヒョウの狩りの能力や人に対する恐怖心を確認した後、野生復帰か動物園での飼育かが判断されます。

リハビリ施設。施設といっても人里から離れた森の一部を広くフェンスで囲い、カメラを設置しただけのもの。建物もプレハブがあるだけでした。

密猟者が仕掛けた罠にかかり、前脚の指を失った1歳の仔ヒョウ。緊急手術を受け、一命を取り留めました。その時の経緯はこちら

実は、この施設はトラのリハビリ施設で、アムールヒョウがリハビリを受けるのは初めてのことで、アムールヒョウの野生復帰が決まれば世界初の事例となります。

野生復帰の際には、追跡調査が可能なように発信機付きの首輪が付けられる予定で、それに慣らすために、今からダミーの首輪が付けられています。

仔ヒョウの野生復帰を願うばかりですが、専門家委員会の決定を期待して待ちたいと思います。

 

関連情報

 

プレハブ小屋でカメラの画像を確認。野生復帰を妨げないため、とにかく人とヒョウが近づかないよう、あらゆる工夫がされています。

カメラが捉えた木登りの様子!がんばれ、仔ヒョウ!

 

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自然保護室長(森林・野生生物・マーケット・フード・コンサベーションコミュニケーション)、TRAFFICジャパンオフィス代表
川江 心一

京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科修士課程修了。
小学生の頃に子供向け科学雑誌の熱帯雨林特集に惹きつけられて以来30年間、夢は熱帯雨林保全に携わること。大学では、森林保全と地域住民の生計の両立を研究するため、インドネシアやラオスに長期滞在。前職でアフリカの農業開発などに携わった後、2013年にWWFに入局。WWFでは、長年の夢であった東南アジアの森林保全プロジェクトを担当し、その後持続可能な天然ゴムの生産・利用に関わる企業との対話も実施。2020年より現職。

小学生の頃に科学雑誌で読んだ熱帯雨林に惹きつけられると同時に、森林破壊のニュースを知り「なんとかしなきゃ!」と思う。以来、海外で熱帯林保全の仕事に携わるのが夢でしたが、大学では残念ながら森林学科に入れず・・。その後、紆余曲折を経て、30半ばにして目指す仕事にたどり着きました。今でもプロジェクトのフィールドに出ている時が一番楽しい。

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