罠にかかった仔ヒョウ


※2023年6月26日をもって、WWFロシア(Vsemirnyi Fond Prirody)はWWFネットワークから離脱しました。

森林担当の川江です。
先日、極東ロシアの「ヒョウの森国立公園」から、罠にかかったアムールヒョウの子どもの映像が届きました。

この国立公園は、森林破壊と密猟によって数を減らしたアムールヒョウを守るため、WWFなどの働きかけによって設立された保護区で、現在、約80頭と言われるその総個体数の8割が生息する場所です。

密猟者が仕掛けた罠にかかっていたのは1歳の仔ヒョウで、発見したロシアの国境警備隊員は、動けないでいるその様子から事態をいち早く察し、公園当局に連絡。

すぐに国立公園スタッフが駆けつけましたが、罠により、すでに前足の指を失っていました。

インターネット上で、大型ネコ科動物の治療経験が豊富な世界の獣医たちが必要な措置について話し合い、保護された仔ヒョウは、すぐに手術を受けることに。

これにはWWFも資金的な支援を行ない、幸い仔ヒョウは無事に命を取りとめることができました。

しかし残念ながら、前脚に大きなケガを負ったこの仔ヒョウが、再びロシアの森に戻れる可能性は、ほぼありません。生涯を飼育されて過ごすことになるでしょう。

「ヒョウの森国立公園」は、他の多くの自然保護区と比べてみても、調査やパトロールなどに大きな努力が傾けられ、その成果が出ている場所です。

それでも、いまだに違法に木を伐採したり、今回のように密猟者が罠をしかける行為が後を絶たず、ヒョウをはじめとする多くの野生の生きものたちが、脅かされ続けています。

こうした根本にある自然破壊の問題を解決しなければ、今回の仔ヒョウのような犠牲は、また必ず出ることでしょう。

多くの野生生物が生きる豊かな森を守っていくことの大切さを、あらためて感じた映像でした。

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ロシア沿海地方の森

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自然保護室長(森林・野生生物・マーケット・フード・コンサベーションコミュニケーション)、TRAFFICジャパンオフィス代表
川江 心一

京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科修士課程修了。
小学生の頃に子供向け科学雑誌の熱帯雨林特集に惹きつけられて以来30年間、夢は熱帯雨林保全に携わること。大学では、森林保全と地域住民の生計の両立を研究するため、インドネシアやラオスに長期滞在。前職でアフリカの農業開発などに携わった後、2013年にWWFに入局。WWFでは、長年の夢であった東南アジアの森林保全プロジェクトを担当し、その後持続可能な天然ゴムの生産・利用に関わる企業との対話も実施。2020年より現職。

小学生の頃に科学雑誌で読んだ熱帯雨林に惹きつけられると同時に、森林破壊のニュースを知り「なんとかしなきゃ!」と思う。以来、海外で熱帯林保全の仕事に携わるのが夢でしたが、大学では残念ながら森林学科に入れず・・。その後、紆余曲折を経て、30半ばにして目指す仕事にたどり着きました。今でもプロジェクトのフィールドに出ている時が一番楽しい。

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