船舶の燃料を脱炭素化していく固い決意 日本郵船訪問記[前編]
2024/05/24
エネルギーの脱炭素化というと、電気ばかりが取りざたされますが、実は電気は再生可能エネルギーや原発などのすでにある技術で脱炭素化が図れるエネルギー。難しいのは、船舶や航空機用の輸送燃料や、産業用に必要な高熱を作る化石燃料の代わりなど、まだこれから脱炭素化に向けて技術開発が必要なエネルギーなのです。
特に大海原を移動する船舶燃料の脱炭素化は難題です。しかし国際海運から出る温室効果ガスの排出量は世界全体の3%も占めるので、対策は待ったなしです。その中で、国際的な海運のルール作りを担う国連の国際海事機関(IMO)が、2023年の夏に世界中の船舶から排出される温室効果ガスを2050年頃までに実質ゼロにするという目標を採択したのです!
この国際的な議論に日本から積極的な働きかけをした企業が、日本郵船です。日本郵船は、2023年11月に発表したNYK Group Decarbonization Story の中で、2030年度に総量ベースで45%削減(スコープ1+2,2021年度比)を掲げたのです! 実はそれまでの削減目標は効率目標だったのですが、関係する取引先に削減に向けた働きかけを行うためにも自らが総量ベースの削減目標を持ち、恐れずに開示するべきという固い決意で総量ベースにしたそうです。
日本郵船を訪問してお話を聞いてところ、まずは社内で長い時間をかけて2050年の社会を思い描き、脱炭素や持続可能性の取組が間違いないとの意識を共有されたそうです。
お話くださったESG担当のお二人は、「昔の帆船時代には『貨物はちゃんと安全につくかな』という所から、近年は『いかに安く、早く、タイムリーか』。その次のお客様の価値観は、『いかに環境への負荷を抑えて運ぶか』。そうすると炭素の排出を減らしていくサービスが次の我々の成長につながるのではないか」と考えたそうです。「運ぶ中身が変わるように、運ぶ手段も変わっていかねば」。お二人が実に情熱をこめて話されていたのが印象的でした。
船舶への投資回収期間は長いので、2030年に45%削減するために必要な将来の炭素価格を社内で設定し、省エネから燃料代替へと着実に削減を進めておられます。実は小西は企業訪問する際には、事前に統合報告書などの資料をしっかり読み込んでいくのですが、将来の炭素価格を設定されていることには気づきませんでした。「どこかに書いてありますか?」と聞いたら、「英語の中期経営計画書に書いてあります。日本語資料はそれを元にした概要なので載っていないんです」。てっきり日本語報告書の英訳と思い込んで英語資料を読まなかった私。世界で船舶を運行する日本郵船グループでは全世界の拠点で経営計画を共有できるように英語が基本であり、さらに「海外の投資家たちはより詳細で定量的な情報が求めるから、充実させている」とのことでした。
真にグローバル企業であるからこそかもしれませんが、日本にこれだけ脱炭素化を成長機会ととらえて取り組む企業があることに大いなる感銘を受けた小西でした!
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