© WWF / Fred Dufour

拡大する洋上風力発電に国内鉄鋼業が活躍する未来! JFEエンジニアリングのモノパイル式新工場


脱炭素化の世界的競争の中で、日本も再エネ、中でも洋上風力発電の開発に官民を挙げて取り組み、国内産業が活気づいています。国内で初めて、洋上風力の基礎部分となるモノパイル式基礎を製造する工場を新設されたJFEグループの西日本製鉄所を訪問してきました。そこはわくわくする未来を作る活気ある現場でした!

日本の風力産業は、少し前に3つの風車メーカーが順次撤退したことにより、日本から風車メーカーはなくなっています。しかしどんどん巨大化する洋上風車の多くの大型部品は、実は鉄鋼、鋳造品であり、大型だからこそなるべく近くで(=国内)作って、運び、組み立てることが求められる製造業であり建設・輸送業なのです。そのため国内調達率で60%程度占めることができる有望な国内産業の振興策なのです!

その中でいち早く風車のモノパイル式基礎の工場を新設することを決断されたのが、JFEグループ。モノパイルとは、巨大な洋上風力を支える円筒の軸のこと。12mにもなる直径で、長さ100m、重量にして1400トンという国内に例のない超重量物です。この巨大な円筒を一気に作ることはできないので、巨大な輪をいくつも作って、それを溶接でくっつけて作っていくのですね!

© WWF / Fred Dufour

洋上風力(イメージ)。基礎部分の円筒タワーがモノパイル

そこで重要となるのが、海水の中で太陽にさらされる厳しい環境下でも持つ堅牢な作り。担い手のJFEエンジニアリングは、これまで明石海峡大橋などの海洋大型建造物を手掛けてこられた実績と高い技術力を持つJFEグループ企業です。初めて洋上風力のモノパイル作りに取り組むのですが、これまでの技術が活かせるということで決断に至ったそうです。工場内の写真はまだ非公開なのですが、中でも最後に輪をつないでいく溶接の技術に高い競争力を持っておられるそうです。

これだけ大型ですから、近接するJFEスチールの製鉄所(倉敷市)でもこれまでの鋼板では間に合わないので、大型化して対応し、材料となる鉄スクラップなどを手掛けるJEF商事もあわせて、JFEグループ3社が協力して当たっています。とにかく大規模で大型ということで、実は工場敷地もこれまでにない広さが必要ですが、この広大な西日本製鉄所ではそれが可能だったのです。これから飛躍的な拡大が見込まれる洋上風力ですから、JFEグループ内の決断も早かったとのこと!その果敢な投資判断と挑戦心に感動しました。

© WWFジャパン

歴史ある福山城の天守の北側壁面には鉄板が張られている。外部から天守が攻撃されることへの備えで、他に例を見ない。令和に大普請をするにあたって、JFEグループが鉄板を寄贈。

広大な西日本製鉄所(福山地区)は、広島県福山市と岡山県笠岡市にまたがっており、製鉄所の大半は福山市にあります。しかし今回のモノパイル新工場は、笠岡市に位置することになり、岡山県も笠岡市もJFEグループ半世紀ぶりの400億円かけての新工場の建設に大喜びだったそうです!地域の経済と雇用を支える基幹産業の存在感を感じ入りました。

JFEエンジニアリング洋上風力PJチーム建設工事事務所長の佐藤哲也氏は、「脱炭素で発電の仕組みを変えていこうという中で、弊社が洋上風力発電市場へ参画できるのは誇りです。現在プロジェクトに従事する約300人も、気概をもって臨んでいます」と顔を輝かせてお話しになり、私も胸がいっぱいになりました。工場の完成は2024年とのこと、ぜひとも国内の多くの洋上風力、そしてアジアの洋上風力の基礎として巣立っていってほしいです!!

日本の再エネの柱ともなる洋上風力発電に、国内勢が活躍する未来に夢膨らみます。詳しくはぜひJFEグループ訪問記をご覧ください。

© WWFジャパン

新工場前でJFEエンジニアリングの皆様と。

この記事をシェアする

専門ディレクター(環境・エネルギー)
小西 雅子

博士(公共政策学・法政大)。米ハーバード大修士課程修了。気象予報士。昭和女子大学特命教授、京都大学院特任教授兼務。
中部日本放送アナウンサーなどを経て、2005 年に国際 NGO の WWF ジャパンへ。専門は国連における気候変動国際交渉及び国内外の環境・エネルギー政策。2002 年国際気象フェスティバル「気象キャスターグランプリ」受賞。環境省中央環境審議会委員なども務めている。著書『地球温暖化を解決したい―エネルギーをどう選ぶ?』(岩波書店 2021)など多数。

世界197か国が温暖化対策を実施する!と決意して2015年に国連で合意された「パリ協定」の成立には感動しました!今や温暖化対策の担い手は各国政府だけではなく、企業や自治体・投資家・それに市民です。「変わる世の中」を応援することが好きな小西です♪

人と自然が調和して
生きられる未来を目指して

WWFは100カ国以上で活動している
環境保全団体です。

PAGE TOP