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日本発のペロブスカイト太陽電池は国産エネルギー![積水化学工業株式会社後編]


日本発の新しい太陽電池ペロブスカイト。薄くて軽く曲げられると言うことで、これまで取り付けられなかった場所にも取り付けられるようになります。開発に携わった積水化学のペロブスカイト太陽電池グループの森田健晴グループ長にお話伺ったところ、特に2030年の再生可能エネルギーの目標が36~38%に引き上げられてから、政府から各省庁に再エネの目標を割り振られ、各省庁が真剣に取り付けられる場所を検討するようになって問い合わせが増えたそうです!(みんな真剣になったら太陽光発電の場所はどんどん出てくるのですね)

たとえば高速道路などでは、道路わきの防音壁にも取り付け可能に。そもそも防音されているということは、そばに人家があるということですから、電気の需要もあるわけですね。全国に広がっている線路脇や駅舎なども、軽くて薄いペロブスカイトならば、太陽光発電の可能性は格段に広がります!さらに北海道など雪深い地域では屋根では雪が降ったら発電できなくなりますが、壁ならば大丈夫。学校の体育館の屋根も軽いペロブスカイトならば載せられるので、真夏の体育館でガンガン冷房をかけられるようになります。温暖化で熱中症の増加が見込まれる中、レジリエンスの強化にもつながりますね。

© Adam Oswell / WWF

将来的には建物の屋根でも壁でも太陽光発電が可能に。

もちろんまだ価格はシリコン型に比べて高いのですが、森田氏は施工コストも入れた総コストで見てほしいとのこと。なぜならばペロブスカイトは軽いから施工するコストは断然低いそうです。そのため総コストでは従来のシリコン型の太陽電池と同じように、2030年までに1キロワット時当たり14円が目標とされています。さらに普及すればもっと早く安くなります!

もともとペロブスカイトは、日本発の技術です。ペロブスカイトは灰チタン石といわれる酸化鉱物の一種で、電力を光へ変換する発光材料としてフィルムなどの基盤に塗って作られるそうです。その主要な原料はヨウ素、ヨウ素は国内で産出されるので、“国産エネルギー”にもなるのです!これは化石燃料のほぼ100%を輸入に頼る日本としては実に希望にあふれる話です!

日本初の技術ですが、今は世界で開発競争が進んでいます。ぜひ日本でも官民を挙げて商業化まで大事に育てて、同時に設置場所をどんどん広げることでコストの低下もはかり、国内の再エネの加速度的な普及を図っていきたいですね!詳しくは積水化学訪問記をご覧ください。

© Michel Gunther / WWF

日本生まれの太陽電池が日本を覆う。それによって海外に依存せず、環境に優しいエネルギーが手に入ります。

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専門ディレクター(環境・エネルギー)
小西 雅子

博士(公共政策学・法政大)。米ハーバード大修士課程修了。気象予報士。昭和女子大学特命教授、京都大学院特任教授兼務。
中部日本放送アナウンサーなどを経て、2005 年に国際 NGO の WWF ジャパンへ。専門は国連における気候変動国際交渉及び国内外の環境・エネルギー政策。2002 年国際気象フェスティバル「気象キャスターグランプリ」受賞。環境省中央環境審議会委員なども務めている。著書『地球温暖化を解決したい―エネルギーをどう選ぶ?』(岩波書店 2021)など多数。

世界197か国が温暖化対策を実施する!と決意して2015年に国連で合意された「パリ協定」の成立には感動しました!今や温暖化対策の担い手は各国政府だけではなく、企業や自治体・投資家・それに市民です。「変わる世の中」を応援することが好きな小西です♪

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