幻と言われたサイは、今も生きています


こんにちは!WWFインドネシアのムスです。

私はボルネオ島の森で野生動物を守るパトロール隊の一員として活動しています。ここでは、チームの仲間と共に、約200平方キロの熱帯林をパトロールしています。

この森には、全世界で100頭以下と推定されているスマトラサイをはじめ、さまざまな野生動物がくらしているのです。

パトロールを実施する上で、私が常に注意して見ているのは人が残す跡です。

森には、生きものが残すさまざまな痕跡があります。それが人間の残したものであることも。

例えば足跡やたき火の跡、吸い殻などのゴミ、密猟者が残した可能性と考えられるものを手がかりに、道のない森の中を注意深く歩き続けます。

罠を見つけた瞬間は、全身の汗が一気に止まる思いです。

「もし見つけるのが1日でも遅れてしまっていたら?」そう思うと、一瞬たりとも気を抜くことはできません。

昨年は、初めてスマトラサイに遭遇しました。

久しぶりに妻の声が聞きたくて、携帯電話の電波が届きそうな丘の上へ登ったときのことです。

これは、サイが木に角をこすりつけた跡です。こうした手がかりもチームと共有します。

突然目の前に現れたサイの姿に、私は驚きのあまり固まってしまいました。

調査用カメラで生息を確認してはいても、その目でスマトラサイを見たパトロール隊員は一人もいなかったのです。

ハッとした私は、サイのストレスにならないよう、急いで木陰に身を隠しました。

初めて実際に見たスマトラサイは、私が思うよりずっと大きく、そのまま森の奥へ姿を消していきました。

ボルネオ島に残されている熱帯林には、スマトラサイや、ボルネオヤマネコなど、まだその生態の多くが謎につつまれている野生動物も生息しています。

パトロール活動は、決して私一人ではできないものです。

すばらしいチームワークで結ばれた仲間、そして海を隔てた日本から応援を続けてくださる日本の皆さんの存在には、いつも励まされています。

絶対にあきらめない、そんな気持ちと共に、私は今日もパトロールを続けます。(聞き取り、編成:森林担当:伊藤)

パトロールチームの仲間たち。

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