空から眺めるボルネオ島


こんにちは、森林グループの小林です。
ボルネオ島での森林保全の担当をしている私は、よく現地の活動現場に赴きます。その際よく利用するのが、乗客なんと10名程度!の小型飛行機。

こうした小型の飛行機は、低空を飛行するため、ボルネオ島を空から眺める機会に恵まれます。

山奥深い村から飛び立つと、さまざまな形の木々が密に生えている、天然の美しい森が見えてきます。

世界屈指の生物多様性を誇る森林を空から眺める機会に恵まれるのは、こういう仕事ならではの幸運です。

飛行機から撮影したボルネオの美しい自然の森

ですが、美しい森が続く中さらに進んでいくと、一見森だけれど区画整理がされて明らかに自然の森とは様子の違う場所が...

こうした場所は、紙の原料を作る人工の森で、自然の森を切り開いて作られたものです。

紙の原料となるアカシアやユーカリを植林している植林地(左)。天然林(右側)との境目がはっきりわかる。

更に進んでいくと......今度は緑色の点が大量に並んでいる光景が見えてきます。

これは、パーム油を作るためのアブラヤシの農園。意外と知られていないことですが、私たちの日々の生活で必ずと言っていいほど利用している「植物油」の生産地です。

広がるアブラヤシ農園。上の方にわずかに自然林が残っている。
アブラヤシの実から作られるパーム油は、食品・化粧品・洗剤など、さまざまな形で私たちの生活の中で利用される。

そして、終着地の海沿いの町に近づくと目に入ってくるのは、沿岸部で大きく森を切り開かれて作られた人工の池。

これは、エビを養殖する池で、マングローブの森を開発して作られています。

沿岸部に広がるエビ養殖のための池

こうして生産された植物油や紙、エビなどは、日本にも輸入され、日々の生活で利用されています。

これらの生産そのものが悪いわけではありませんが、森の環境や地域の人の権利に配慮して実施されることが大切です。

今も残る自然豊かなボルネオの森には、多くの野生動物たちが息づいています。

飛行機からの光景を見るたびに、活動を頑張っていかなければ、と心を新たにする次第です。

世界でボルネオの森にだけ棲息しているテングザル。森林を守ることはこうした生き物を守ることに繋がる。

関連情報

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自然保護室(淡水)
小林 俊介

修士(動物学・京都大学)
京都大学在学時にボルネオ島での野生動物の行動学を専攻。ボルネオの豊かな生物層の魅力を知るとともに農園開発などの環境課題の大きさを実感する。2013年にWWFに入局。ボルネオ島での絶滅危惧種保全、持続可能な森林・農園管理、ESDなどの活動を担当。2018年よりサンゴ礁保護研究センター長。サンゴ礁保護研究センターの地元移譲を経て2021年から現在まで淡水グループ繊維担当と、海洋グループ白保担当を兼務。

子供のころからの動物好きが高じて、東南アジアでの野生動物の研究に携わった後、WWFへ。森林、海洋、淡水と様々な分野を担当し、持続可能な資源管理を中心に海外・国内のフィールドにも携わってまいりました。フィールドで豊かな自然とそれを守るために頑張っている仲間たちと交流するのが何よりの楽しみです。

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