失われた母子の命 スマトラの森から
2017/12/29
先日、インドネシアのスマトラ島から、ショッキングなニュースが届きました。
パーム油の原料になるアブラヤシの農園で、妊娠したメスのスマトラゾウの死骸が見つかった、というものです。
付近の住民に毒殺された可能性が高いとのことでした。
あまり日本では報道されませんが、こうした事件はスマトラでは珍しくありません。
ゾウの生息地だった熱帯林が切り拓かれ、農園が造成されて、そこへやって来たゾウがアブラヤシの若芽を食べたり、木を倒したりして人の恨みを買い、衝突が起きる。
そこで、住民は今回のように毒を使用、ゾウを殺害する事態が起きるのです。
犠牲になるのはゾウの側だけではありません。
住民がゾウに襲われて死亡する事件も毎年起きています。小さな子どもが犠牲になることもあります。
非常に大きな問題を抱える、パーム油とアブラヤシ農園の開発。
これは、私たち日本人の暮らしとも無関係ではありません。
ニュースでは触れられていませんでしたが、こうした場所で作られたパーム油は日本にも輸出され、消費されているからです。
スーパーに並ぶ多くの食品などにもパーム油は含まれますが、原材料名としては「植物油」といった表記しかなされないため、そもそも存在すらあまり知られていないのが現状です。
私たちはこの問題を解決する手段の一つとして、森林環境に配慮して生産されたパーム油に与えられる「RSPO」認証を広げる取り組みを行なっています。
消費者がこのRSPOマークのついた製品を選べば、今回のような悲惨な事故を減らしてゆく一つの力になるのです。
野生のスマトラゾウと、スマトラの森を守るため、日本でもできることがあることを、ぜひ皆さんに知っていただきたいと思います。(自然保護室 伊藤)