エキスパートに学ぶ、サイ調査のいろは


こんにちは、自然保護室の小林です。
20年ぶりに生存が確認された"幻のサイ"スマトラサイが暮らすボルネオ島の森を、先日、訪れました。

するとそこには、なじみのある面々に混じって、WWFインドネシアのサイのエキスパート、イワンの顔が。

彼はふだん、ジャワサイの聖地と言われるジャワ島のウジュンクーロン国立公園で保護活動にあたっていますが、この時はスマトラサイ調査に合流していました。

彼に案内され歩を進めると、そこには、ぬかるみに残った幅20㎝ほどの足跡が!

WWFインドネシアのサイのエキスパート・イワン

3つの爪痕から、スマトラサイのものであるのは明らかです。

まさか、自分の目でスマトラサイが生きているその証を目の当たりにできるとは思いもしなかった私の興奮は、言うまでもありません。

足跡はスマトラサイの年齢や性別を推測する貴重な情報源です。

イワンによれば、幼い子連れの母親の場合、自らは後ろを歩き、前を行く子どもの足跡に自らの足跡を重ねることで、子の存在を悟られないようにすることもあるんだそう。

3つの爪痕からはっきりそれとわかる、スマトラサイの足型

次に彼は、ねじ曲げられた細い木の枝を指さしながら、サイが木の皮を食べようとした痕だと教えてくれました。

このような食べ方をするのは、世界に生きる5種のサイの中でスマトラサイだけだといいます。

スマトラサイは口が小さいため、幹をひねって皮をはがすことで食べやすくしているとか。

アフリカのサバンナに生きるクロサイやシロサイと違い、熱帯林に生息するアジアのサイは、姿を確認することさえ難しく、その生態はいまだ多くが謎に包まれています。

小さな口で器用に幹をねじって皮を食べる

WWFは、こういった地道な観察を重ね、食性などのデータをまとめることで、世界に残りわずか300頭といわれるスマトラサイの国際的な保護活動に寄与したいと考えています。

スマトラサイ

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自然保護室(淡水)
小林 俊介

修士(動物学・京都大学)
京都大学在学時にボルネオ島での野生動物の行動学を専攻。ボルネオの豊かな生物層の魅力を知るとともに農園開発などの環境課題の大きさを実感する。2013年にWWFに入局。ボルネオ島での絶滅危惧種保全、持続可能な森林・農園管理、ESDなどの活動を担当。2018年よりサンゴ礁保護研究センター長。サンゴ礁保護研究センターの地元移譲を経て2021年から現在まで淡水グループ繊維担当と、海洋グループ白保担当を兼務。

子供のころからの動物好きが高じて、東南アジアでの野生動物の研究に携わった後、WWFへ。森林、海洋、淡水と様々な分野を担当し、持続可能な資源管理を中心に海外・国内のフィールドにも携わってまいりました。フィールドで豊かな自然とそれを守るために頑張っている仲間たちと交流するのが何よりの楽しみです。

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