ただ今プロポーズ中!!スマトラの森にて【動画あり】


調査用の自動撮影カメラが捉えた2頭のトラ。口をあけ、歯を見せながら低い声で唸っていますが、険悪な雰囲気ではありません。

それもそのはず、これは交尾前のスマトラトラのペアの映像なのです。

鼻を鳴らしているのは、2頭が出会ったばかりで、関係を築いている兆し。左側のオスが口をあけているのは、口内にもある嗅覚でメスのにおいを嗅ぎ、相手が交尾可能な状態かを確かめているためです。

一方、メスが横たわっているのは、交尾の準備が整っていることを示しています。

この貴重な映像を私が入手したのは、先日、インドネシア、スマトラ島のブキ・バリサン・セラタン国立公園に行った折のことでした。

左側の体の大きな個体がオス、右側の体の小さな個体がメス

そもそも、単独行動をするトラの成獣が2頭一緒にいること自体が希なこと。そう、交尾の期間の数日間を除くと、まず無いことなのです。

しかも森の中の、ある地点に固定されたカメラの前で、こんな姿を見せてくれるとは!

WWFのトラの専門家ジョセフ・ヴァタカヴェンも、このような映像を見たのは初めてだ、と驚きを隠しませんでした。

野生のトラは1週間前後、あまり移動も、食物を取ることもせず、交尾を行なうそうです。ジョセフによれば、映像の2頭は4~7才ほどで、もっとも交尾に適した年齢だそう。

トラは妊娠確率が低く、20~40%程度と言われていますが、うまく行けば今後、かわいい仔トラの姿が、カメラに収められるかもしれません。

しかし、密猟の脅威は今も続いています。2014年の1年間にこの国立公園内で回収された罠は80以上。WWFは公園当局と協力しながら、調査とパトロールを継続していきたいと考えています。

密猟者がしかけた罠を回収するWWFスタッフ

生まれてくるかもしれない仔トラたちを守るためにも、ぜひ活動へのご支援をお願いいたします。(自然保護室 川江)

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自然保護室長(森林・野生生物・マーケット・フード・コンサベーションコミュニケーション)、TRAFFICジャパンオフィス代表
川江 心一

京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科修士課程修了。
小学生の頃に子供向け科学雑誌の熱帯雨林特集に惹きつけられて以来30年間、夢は熱帯雨林保全に携わること。大学では、森林保全と地域住民の生計の両立を研究するため、インドネシアやラオスに長期滞在。前職でアフリカの農業開発などに携わった後、2013年にWWFに入局。WWFでは、長年の夢であった東南アジアの森林保全プロジェクトを担当し、その後持続可能な天然ゴムの生産・利用に関わる企業との対話も実施。2020年より現職。

小学生の頃に科学雑誌で読んだ熱帯雨林に惹きつけられると同時に、森林破壊のニュースを知り「なんとかしなきゃ!」と思う。以来、海外で熱帯林保全の仕事に携わるのが夢でしたが、大学では残念ながら森林学科に入れず・・。その後、紆余曲折を経て、30半ばにして目指す仕事にたどり着きました。今でもプロジェクトのフィールドに出ている時が一番楽しい。

人と自然が調和して
生きられる未来を目指して

WWFは100カ国以上で活動している
環境保全団体です。

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