2016年7月~2021年6月、WWFとトヨタ自動車は、5年間のパートナーシップを結び、持続可能な社会の実現に向けた活動を展開しました。この取り組みで、トヨタはWWFの「生きているアジアの森プロジェクト "Living Asian Forest Project"」を支援。紙や木、パルプやパームオイル、天然ゴムなど、需要が高まっている森林資源の使用を持続可能なものにする活動に注力し、さらに「CO2ゼロ」の社会の実現も目指しました。
この「生きているアジアの森プロジェクト」は、自動車業界として世界初、日本企業として初の、WWFグローバル・コーポレート・パートナーシップの事例となりました。
保全活動の内容には、各フィールドにおける生物調査や森林再生、そして森の周辺に住む人々の暮らしを支えるさまざまな活動に加えて、熱帯林の破壊や絶滅危惧種の個体数減少の主な原因となっている森林資源(木材、紙パルプ、パーム油、天然ゴム等)の生産、調達、消費を持続可能なものにしていくための活動が含まれます。
インドネシアの面積は地球の地表の1.3%に過ぎませんが、世界に残存する熱帯林のおよそ10%がインドネシアにあり、哺乳類の12%、爬虫類・両生類の 7.3%、鳥類の17%が生息しています。しかし今、インドネシアの豊かな生物多様性は急速に失われ、特に生物多様性が豊かな低地林は、大きな危機にさらされています。
スマトラ島では、かつて島全体を覆っていた熱帯雨林が、この100年間に急激に失われてきました。とりわけ、減少が著しいのは、島の東部に広がる低地の熱帯雨林で、今のまま伐採が進んだ場合、近い将来これらの森が全て失われるおそれがあると指摘されています。
そして、かつては手つかずの熱帯林が島を覆い、絶滅が危惧されているオランウータン、ゾウ、サイといった大型の哺乳動物にとっても貴重な生息地となっているボルネオ島(カリマンタン)の森林も、過去半世紀のうちに急速に破壊され、現在までに50%が消失してしまいました。
パートナーシップでは、スマトラ島中部のテッソ・ニロ、南部のブキ・バリサン・セラタン国立公園やボルネオ島など、インドネシアの各地で、さまざまな森林保全活動を支援しました。
チベット高原から南シナ海まで、4,000km以上にわたって流れるメコン川。このメコン川には全長3mにもなるナマズやコイなど、さまざまな魚類が生息しているだけでなく、その流域の国々に広がる森林にはゾウやトラなど多様な陸上生物も生息しています。しかし今、東南アジア諸国の経済発展に伴い、ダムや道路をはじめとするインフラ整備が進むと同時に、川や森の環境破壊が急激に進んでいます。
メコン地域(中国雲南省を除く)では、1973年から2009年までの間に森林面積が140万平方キロメートルから98万平方キロメートルにまで減少。この40年間の森林減少面積は、日本の国土面積の1.4倍になります。
現在のペースで森林破壊が進めば、2030年までにさらに15~30万平方キロメートルの森林が失われ、その大部分は天然林が残っているタイ・ミャンマー国境とカンボジア北東部に集中すると予想されています。
パートナーシップでは、メコン地域の生物多様性を保全するために、森林モニタリングや持続可能な天然ゴム生産の推進、違法な野生生物取引の取り締まり強化などの活動を支援しました。
「天然ゴムが使われている製品」と聞いたとき、どのようなものが思い浮かぶでしょうか。実は、自転車や自動車などの乗り物に使われるタイヤ、輪ゴム、ゴムホース、ゴム製の手袋や長靴、スニーカーの靴底など身近な製品に使用されています。
天然ゴムの生産地が集中しているのは、タイ、インドネシア、マレーシア、ベトナムなどの東南アジアで、この4カ国で世界の総生産量の約4分の3を占めています。中でもタイとインドネシアは、世界の二大天然ゴム生産国で、日本が消費する天然ゴムの大部分もこれらの国から輸入されています。
近年、これらの東南アジアの国々では、手つかずの森林が開発や大規模な森林伐採のために急速に失われています。その原因のひとつに、天然ゴムを生産するための農地拡大もあることが報告されています。
パートナーシップでは、地球環境への負荷を極力軽減し、生物多様性を守りながら、経済的に豊かになろうとするニーズの大きな地域の持続可能な発展に貢献することを目指し、天然ゴムの持続可能な生産と調達に取り組みました。