2025年日本国際博覧会会場の建設整備に対して夢洲の生物多様性の保全と回復 を求める要望書
2022/03/22
公益社団法人2025年日本国際博覧会協会
会長 十倉 雅和 様
大阪市長 松井 一郎 様
大阪府知事 吉村 洋文 様
環境大臣 山口 壯 様
内閣官房国際博覧会推進本部 事務局 御中
理事長 亀山 章
公益財団法人 世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン)
会長 末吉 竹二郎
公益財団法人 日本野鳥の会
理事長 遠藤 孝一
大阪市は、2025年日本国際博覧会(以下、大阪・関西万博)の会場の環境影響評価手続きに際して、「夢洲では多様な鳥類が確認されていることから、専門家等の意見を聴取しながら、工事着手までにこれら鳥類の生息・生育環境に配慮した整備内容やスケジュール等のロードマップを作成し、湿地や草地、砂れき地等の多様な環境を保全・創出すること。」との市長意見を提出しています(令和4年2月9日付け)。
我々は、わが国の自然保護と生物多様性の保全に関わる団体として、コアジサシやシギ・チドリ類などの水鳥の生息地である夢洲の生物多様性の保全と回復を目指した整備に向けて、以下のことを強く要望します。
- 夢洲の土地造成事業を見直し、大阪・関西万博の会場整備計画の「ウォーターワールド」は、万博会期後もシギ・チドリ類などの水鳥が生息できるように、人工的な構造物による整備ではなく、湿地と干潟を形成する計画に変更すること。
- 夢洲の未利用地にコアジサシの繁殖地を整備すること。
- 夢洲は、万博開催後も自然観察・野鳥観察など自然体験の場として活用し、大阪湾沿岸域の重要な湿地の保全と利用の面から、南港野鳥公園と合わせて、ラムサール条約湿地の登録を目指すこと。
- これらを具体的に解決し実現するうえでも、関係する環境団体や専門家など多様な関係者とのオープンな協議会の場を早急に設けること。
大阪・関西万博は、「SDGs達成の貢献」を目指すことを掲げており、会場建設と運営には高い持続可能性と自然環境の保全が必要不可欠です。夢洲は人工的に造成された環境ですが、絶滅危惧種を含む多くの野生生物の生息地となっており、万博開催によってこれらの自然環境を消失させることは、万博の理念とも相反しています。
一方で世界では、2022年中に中国昆明で開催される生物多様性条約第15回締約国会議において、2030年までに世界の陸域・海域の30%以上を保全・保護することを目指す目標「30 by 30」を含むポスト2020年枠組みが決議される見込みです。我々が要望する夢洲の自然環境の保全と回復は、この新たな国際枠組みにも貢献します。また、大阪湾沿岸域の残された湿地の生態系ネットワークの重要な拠点として夢洲を位置づけ、ラムサール条約湿地の登録を目指した保全と回復の取り組みが重要であり、このプロセスは世界に積極的に発信すべく大阪・関西万博のレガシーになりえます。
大阪市・大阪府と万博協会には、これらの状況を鑑み、上記の要望を前向きに検討すること、また環境省、内閣官房国際博覧会推進本部には、それを支援することを望みます。