5つのキーワードで振り返る!2013環境トピックス
2013/12/31
2013年もいよいよフィナーレ。今年はどんな一年だったでしょうか?WWFジャパンでは、2013年に特に印象的だった環境トピックスを、5つのキーワードでふりかえってみたいと思います。ナビゲーターを務めるのは、WWFジャパン自然保護室長の東梅貞義。今年のしめくくりに、ぜひご覧ください!
Keyword1:幻
もう絶滅したのでは、と心配している生き物がすむ場所が、世界各地にいくつもあります。そういうなかで、嬉しいニュース。ボルネオ島のインドネシア領で、1990年代にもう絶滅してしまったといわれていた「スマトラサイ」が、20年ぶりに発見されました。カメラを設置していたのですが、それに姿が映ったんです。
それから、ベトナム、ラオスの森をWWFが調査をした結果、ウシに近いサオラという生き物が、15年前くらいに見つかっていたんです。残念ながらこの生き物は深い森に棲んでいるため、そのあとは姿が見られず、本当に生き残っているのだろうかと思っていたんですけれども、幻ではなく生きているという証拠を、やはりカメラで捉えることができました。
日本の中でもっとも絶滅の恐れが高いクマが、実は四国に棲んでいます。少なければ10数頭くらいしか生き残っていないのではないかといわれており、これを守るためにWWFジャパンは5、6年取り組んできています。今まで追いかけていた"ショウコ"というメスグマが、子どもと一緒に巣穴から顔を出す姿が撮影されました。
Keyword2:マイナス3.8%
これは、日本が地球温暖化を引き起こすガスを2005年比で3.8%減らすというニュース。しかし残念ながら、このマイナス3.8%というのは、1990年比でプラス3.1%。国際的に温暖化を防止するための会議が今年の11月に開かれた際に、日本政府が公表した数字です。私たち環境NGOは、温暖化ガスを減らして、自然も人の暮らしも守ろうと働きかけていますが、日本政府がそれに反し、一見減らすように見せる、まやかしの数字を出したということに失望しました。
今回のこのワルシャワで行われた会議には、2つの大きな宿題がありました。一つは、2015年までにどうやって国際合意をするのかということに合意すること。それからもう一つが、国際的な合意ができるまでに、自主的にきちんとどれだけガスを減らせるのかという具体策。ところが、議長国をはじめ、参加国の日本もはじめ、なかなか積極的な姿勢を示さないということに対し、NGOとしては大きな危機感をもっていました。そのため各国政府に、より高い目標で温暖化防止に取り組むことを訴えるため、会議終盤、会場から引き上げました。国際会議では基本的にWWFは交渉する、対話をするという基本方針を持っています。あえてボイコットに近いようなかたちをとるということは初めてのことでした。
私たちは、自然エネルギーこそが、この地球温暖化を解決するのに非常に鍵になる、最も重要な取り組みだと考えています。特にこれから生活を豊かにしていかなければならない発展途上国にとっては、自然エネルギーがまさに頼りになります。来年WWFジャパンでは、「自然エネルギーはあてになるキャンペーン」を新たに始める予定です。
Keyword3:アフリカが危ない
アフリカは野生生物が豊かに暮らしているところですが、この4、5年で新たな危機がおとずれています。どんな危機かと申し上げますと、今年で約1000頭近いサイが密猟されています。実はサイの密猟は、今から20年くらい前までは、年間で15頭、20頭、30頭程度だったんです。それから比べますと、今年の数字というのは30倍。非常に大きな規模で問題が急速に拡大しているということです。これは本当に危機としかいいようがありません。
サイが密猟される理由は、サイの角が病気に効くとアジアで信じられているからです。科学的根拠は一切ありません。
もう一つは、ゾウの密猟です。年間2万頭をこえる数で殺されています。象牙の利用のためです。これはアフリカで消費されているのではなくて、アジアの国々、特に中国、それからタイで消費されています。中国、それからバンコクに遊びに行かれる方も多いでしょう。象牙の製品はアフリカのゾウの危機に関わっています。よく考えて、正しい選択をお願いします。
Keyword4:異業種コラボ
WWFにとっては、いろいろな方々とお話をして新たな取り組みを始めるという一年でした。例えば、紙を利用するために森林が伐採され生き物がすみかを失う、また地域の人たちもいろいろな被害を受けるという環境問題の連鎖が起きています。この問題に関して、企業の方々から、自分たちが紙を買うことによって生産地の自然や人のくらしに影響を与えているのならば、そういうことがないように行動を変えたいというお申し出をいただきました。それも、一つの企業だけでなく、業種もさまざまな複数の企業が集まって、さらに異業種であるWWFという環境NGOと世間に向けて大きく発信するという取り組みが始まりました。それが「紙のコンソーシアム」という取り組みです。
また海においても、新たな方と協力した取り組みが始まりました。海の環境問題の一つに、養殖水産物の問題があります。養殖には魚に食べさせるエサが必要ですが、そのエサとなる魚を獲りすぎるなどの問題が起こっています。それを解決するのに、日本で養殖業に取り組んでいる方々が一緒に参加したい、参加するだけでなく、世界で決まる養殖の判断基準を満たすような取り組みに、自分たちも加わりたい、という方々との取り組みが始まりました。
環境問題はニュースで読む、どこか遠くの問題というように見えるかもしれません。しかし実は、環境問題は、ものを作る現場で起きているからこそ、海や森にすごく負担がかかってしまう。でも作っている人たちは海を壊したくて、森を壊したくてやっているわけではなくて、それを売り買いする人がいるからやっている。そこでWWFが、売り買いしている人たちとお話をすると、それは買ってくれる人からの需要があるから、というお話を聞かされます。買っている人、作っている人、それからそれを最終的に使っている私たち一人一人が、垣根を取っ払ってきちんと取り組むことが必要です。
Keyword5:日本生まれ
実は足元にも危機が迫っているというお話。今年は、環境省によってニホンウナギが絶滅危惧種に指定されました。もし私たちがこのまま好き放題にウナギを食べていると、ニホンウナギが将来海から消えてしまう、食卓からも消え去ってしまう、文化としても続けられないという、そういう危機が訪れつつあるということです。
こちらは希望が持てるお話なのですが、沖縄の島に、リュウキュウヤマガメというカメが生息しています。日本に住んでいると山に棲んでいるカメぐらいにしか見えないのですが、海外では、この希少なカメをペットにしたいという需要があります。日本の山からカメが獲られて、海外にどんどん輸出されてしまうという危機が近年高まっていました。これを絶滅の危機にさらさないために、ワシントン条約でこのリュウキュウヤマガメが、日本政府の許可なしには一切輸出してはならないと決められました。これによってリュウキュウヤマガメに対する危機が減っていくことを期待しています。
2013年は世界の環境にとってどんな一年でしたか?
2013年は、「どういう未来を選ぶのか」が問われ続けた一年でした。例えばインドネシアの森を減らしている紙をこのまま買い続けるのか、または世界の海に大きな負荷をかけているそういう残念な問題が残っている養殖のものを知らずに買い続けるのか、ということが私たち一人一人に、日本の企業に、日本の政府にも問われつづけた一年でした。
2014年 注目のトピックス
2014年は「選べるようになる」がキーワードです。
例えば、残念ながらスマトラの森を減らしながら作られているパーム油。シャンプーや洗剤や食品のなかにも使われています。これを森や生き物に大きな影響を与えず生産するという、「RSPO」という取り組みがあります。この制度によって、第三者からきちんと認められた製品が、日本の市場にも出て、私たちが選べるようになります。
それからもうひとつ、食生活のなかでもよりいっそう選択が広がります。いま、環境に配慮した天然の魚を選ぶためには「MSC」という海のエコラベルがあります。でも残念ながら環境に配慮した養殖の魚は日本では選ぶことができなかったんです。それが2014年には「ASC」という名で、養殖の魚についても環境への配慮を第三者が認証する製品が、いよいよ日本に登場する予定です。ニュースに注目していただきたいと思います。
2014年のはじめには、日本で気候変動に関する「IPCC(気候変動に関する政府間パネル)」の会議が開かれます。気候変動がどういう規模で起きているのか、どれだけの影響があるのかという会議です。このIPCCは横浜で開催されます。とても大事な国際会議ですので、きっとニュースにいっぱい流れるでしょう。ぜひ耳を傾けていただきたいと思います。
メッセージ
WWFジャパンのサポーターのみなさん、応援いつもありがとうございます。2014年もぜひみなさんと一緒に、地球の環境を守るために取り組んでいきたいと思います。私たちがどんな現場で取り組んでいるのか、どんな異業種の方々と取り組んでいるのか、ニュースを発信し続けます。2014年もよろしくお願いいたします。