土用の丑の日にウナギを想う


水産担当の新井です。

7月22日の今日は、土用の丑の日。諸説ありますが、江戸時代の蘭学者、平賀源内が広めて以来、日本では夏の土用の丑の日に鰻が食されてきました。ですが、このウナギが今、深刻な状況に追い込まれています。

私たちが食べている鰻は、その多くがニホンウナギという種です。実はこのニホンウナギ、今年の2月、環境省のレッドリスト(絶滅のおそれのある野生生物の種のリスト)に掲載されました。これは、近い将来、日本で野生のウナギが絶滅する危険性が高いということです。

また、IUCN(国際自然保護連合)がまとめている、世界のレッドリストでも、日本ウナギの掲載について、検討が行なわれているといいます。

「養殖ウナギなら大丈夫でしょう?」と思われるかもしれませんが、いえいえそうではありません。

養殖ウナギとは、実は天然のニホンウナギの稚魚を漁獲して、養殖場で大きく育てたもの。ニホンウナギの生態には、まだまだ不明な点が多く、卵からの完全な養殖方法も現在のところ確立されていないのです。

ですから、天然のニホンウナギの稚魚がとれなくなれば、養殖鰻も生産できない!ということになります。

水産庁によると、今年のニホンウナギの稚魚の採捕量は、5.2トン。2010年、2011年、2012年は約9トンで推移していましたが、今年は昨年の58%まで減少しています(図1)。

また、独立行政法人水産総合研究センターの資料によれば、1970年代以降ニホンウナギの稚魚(シラスウナギ)の漁獲量も大きく減少(図2)。これほど身近な魚であるにもかかわらず、ウナギの資源状況は危機的な状況にあるのです。

お店で安いウナギに飛びつくのも、ちょっと考え物。近い将来、土用の丑の日に鰻の蒲焼きが食べられなくなるようなことのないように、資源のことにも目を向けていただければと思います。

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(図1)ニホンウナギの稚魚の池入れ量と取引価格の推移

(図2)シラスウナギの漁獲量の推移

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ブランドコミュニケーション室(メディア)
新井 秀子

WWFの活動情報を主に報道関係者向けに発信しています。

地球環境問題に取組む研究者になろうと決意して、民間企業を辞めて大学院に。在学中に霞ヶ浦流域河川の市民調査に携わり、市民活動の意義を体得。水質調査に行ったフィリピンで褐色の山々に衝撃を受け、何とかしたいと、研究者の道よりWWFを選択。あきらめずに一歩ずつ進んでいます。

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