希少種「サオラ」ベトナムで15年ぶりの撮影記録


「サオラ」という動物が、ここ数日、ちょっとしたニュースになっています。
サオラは、インドシナ半島の森にすむウシ科の動物で、顔に独特な白い模様があり、背面へまっすぐ伸びた美しい角が特徴です。

WWFなどの調査により、この動物が発見されたのは1992年(ヤンバルクイナよりも新しい!)。当時、世界的なニュースにもなりました。

しかし、もともと数が少なく、生息域も広くはなかったサオラのこと。その後も、生存の痕跡は認められても、生きた姿が実際に確認・報告された例はわずかにとどまりました。

その野生の姿が今回、ベトナムで実に15年ぶりに撮影された!ということで話題になったわけです。

これにはさすがに興奮して、私もその画像を見たのですが...

写っていたのは、森の中を横切る姿を、写真の端に捉えたモノクロの画像で、残念ながら顔は見えず!というものでした。

少々拍子抜けした感は否めませんでしたが、野外で、しかも熱帯林の中で野生の動物を撮影する困難を思えば、これも頷けること。

逆にいえば、この画像を手にするまで、WWFベトナムのスタッフや研究者たちは、大変な苦労をしたのだと思います。

IUCN(国際自然保護連合)の「レッドリスト」によれば、サオラの推定個体数は750頭をはるかに下回るとみられており、絶滅の危機も最大の「近絶滅種(CR:Critically Endangered)」にランクされています。

今も続く密猟を絶ち、サオラがこれからも生き続けられる森の自然を守ってゆかねば、本当に絶滅してしまうかもしれません。

そうした中で今回、生存がこうして確認されたのは喜ばしいことです。現地でパトロールや調査に取り組む方々を、これからも応援してゆきたいと思います。

なお、この件のニュースで、一部サオラを「ソアラ」としているようですが、これは報道の誤植です(^^; お間違いのないように。(広報担当:三間)

写真の右端にサオラが写っています。よく見ると、長い角も見えます。

1990年代にベトナムで撮影されたサオラの幼獣。角がまだ短いのが分かります。

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自然保護室(コンサベーションコミュニケーション グループ長)
三間 淳吉

学士(芸術学)。事務局でのボランティアを経て、1997年から広報スタッフとして活動に参加。国内外の環境問題と、保全活動の動向・変遷を追いつつ、各種出版物、ウェブサイト、SNSなどの編集や制作、運用管理を担当。これまで100種以上の世界の絶滅危惧種について記事を執筆。「人と自然のかかわり方」の探求は、ライフワークの一つ。

虫や鳥、魚たちの姿を追って45年。生きものの魅力に触れたことがきっかけで、気が付けばこの30年は、環境問題を追いかけていました。自然を壊すのは人。守ろうとするのも人。生きものたちの生きざまに学びながら、謙虚な気持ちで自然を未来に引き継いでいきたいと願っています。

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