各国中央銀行と金融監督当局に対する「グローバルな行動喚起(CTA)」
2022/09/09
金融監督機関(金融庁)と中央銀行への期待
世界のいくつかの国では、金融監督当局と中央銀行が環境の危機が金融の安定と物価水準にもたらす脅威を認識し、気候変動や生物多様性の損失に組織として取り組み、脱炭素社会への移行を支援することを約束しています。
しかし2022年9月7日に、WWFなど世界90あまりの組織が署名し、発表した「グローバルな行動喚起(CTA)」は、気候関連の情報開示などの現在の行動が、双子の危機によってもたらされるリスクから保護するには不十分であることを強調しています。
「グローバルな行動喚起(CTA)」
その主な指摘は、以下の通りです。
- 現在の自然損失は、2030 年までに世界経済に年間 2.7 兆ドル の損害を与える可能性がある。
- 2.5度の平均気温の上昇により、最大 24 兆ドル 相当の資産が危険にさらされる可能性がある。
- 地球温暖化がこのまま進むと、気候リスクと影響により、「保険をかけられない 」世界が生まれる可能性がある。
国連環境計画・金融イニシアティブ、欧州環境局、ネイチャーファイナンス、天然資源保護協議会(NRDC)、ニューエコノミクス財団などの組織が共同署名したこのCTAは、各国の中央銀行と金融監督当局が環境と気候への悪影響を制限し、将来のリスクから金融システムを保護し、市場を形成する自らの役割を利用してより広範な変化を起こすための具体的なステップを設定しています。
CTAは、「今日の環境への影響が明日のリスクを生み出す」ことを強調しており、中央銀行と金融規制当局に対しては、予防的措置を講じることがこれら組織の使命であると訴えています。
また、このCTAは、G20 財務大臣・中央銀行総裁会議、G20 首脳サミット、第27回気候変動枠組条約締約国会議、生物多様性条約第15回締約国会議など、国際的な政策立案者が今後数か月にわたっていくつかの重要な会合をする予定であるこのタイミングで発表されました。
金融政策と規制は、今後も続く生物多様性の損失と地球温暖化によって引き起こされる重大な金融と価格の不安定性に対処する必要があります。
WWF は、特に2022年10月13~14日にインドネシアのバリで開催される財務大臣と中央銀行総裁の会議が、各国がコミットメントを具体的な行動に移すだけでなく、以下の重要な機会を提供すると考えています。
- 生物多様性の喪失と気候変動を双子の危機として扱い、それが金融と物価の安定に及ぼす大規模な不安定化の影響を認識する。
- 予防的アプローチを使用し、積極的かつ断固として取り組み、将来のリスクを防止する。
- 今日の影響は明日のリスクであることを認識し、金融規制と監督をより長い期間 (10~30年) を視野に入れたものとする。
また、CTAの署名者は、中央銀行と金融監督当局に次のことを求めています。
- 2030年までのネイチャー ポジティブ達成を採用し、平均気温の上昇を1.5度に制限し、2050 年までに温室効果ガスの排出量ネットゼロを達成することを、その主要な使命とすること。
- 最も高い財務リスクを内包する「常に環境に有害な」経済活動、企業、セクターによる経済コストと金融リスクを、金融政策と規制がより適切に反映するようにすることで、経済の変革を促進すること。
- 規制する対象のすべての金融機関に対し、生物多様性と気候変動に関する信頼できる移行の計画を公表するよう求めること。
WWF のファイナンス・プラクティスリーダーであるマーガレット・ クロウは、次のように述べます。
「中央銀行と金融監督当局は、金融と物価の安定を提供するために存在します。気候と自然に関連するリスクをよりよく理解し、管理するための緊急の行動がなければ、これらのリスクはマクロ経済に重大な影響を与えることになるでしょう」
WWFは今後も、脱炭素社会の実現と生物多様性の保全における中央銀行と金融監督当局の役割を注視し、提言をしていきます。