メコンの森の野生動物
2019/04/16
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©HelmutDILLER
メコン川の流域を中心としたインドシナ半島に広がる豊かな森。
しかし、2030年までに、まとまった規模の森はほとんど失われてしまうとの予測すらあります。
まさに貴重な森を反映しているかのように、メコンの森にはたくさんの動物が生息しています。そんなメコン地域の豊かさを感じてみませんか?
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メコンの森とは?
メコンの森とは、5つの国、ミャンマー、ラオス、タイ、カンボジア、ベトナムに渡って流れる、東南アジア最大の河川であるメコン川流域の森を指します。
その面積は、日本の国土の約2.5倍。
一年を通して温暖な気候で、乾季と雨季があります。
様々な生き物が生息している豊かな森ですが、今、天然ゴムの生産地拡大による農園開発により失われつつあります。
そして、メコン地域で生産された天然ゴムを、日本も多く輸入しています。
もしこのまま開発が続いたら、どんな動物に影響があるのでしょうか?
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メコンの森の野生動物
インドシナトラ
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インドシナトラは東南アジアに分布するトラの亜種)の一つです。20世紀の終わりごろまでは、最大で1,700頭ほどが生息していると推定されていましたが、その後、各地で激減。WWFは、インドシナトラの保全のため、現在タイで生息域の調査を行っています。
ウンピョウ
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名前の「ウン」は「雲」のこと。身体のまだら模様が雲のように見えることから付けられました。大きく、角張った特徴のある下あごと、ネコ科動物で最も長いといわれる犬歯(牙)を持ち、シカやサル、鳥などを捕食します。密猟や生息地の熱帯林消滅によって、今では絶滅の危機に。台湾などではすでに絶滅したといわれています。
アジアゾウ
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20世紀の初頭にはイランから中国にかけて10万頭が生息していたともいわれています。しかし密猟の犠牲になったり、開発による生息地の森の減少で、21世紀の初めには、4万~5万頭までその数を減らしてしまいました。
ターミンジカ
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インド北東部のアッサム州やミャンマーの湿地帯、またタイやカンボジアの乾燥して開けた草地に生息する、三日月型に大きくカーブした角が特徴のシカです。現在の分布域が紛争や内戦にさらされた地域であったこともあり、全体の個体数もよくわかっていません。保護活動と同時に、生息状況の調査が必要とされています。
アジアスイギュウ
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アジアスイギュウは、東南アジアを中心に世界各地で飼育されている家畜の水牛の原種になったと考えられている野生動物です。かつては様々な国や島に広く分布していましたが、生息地の消失や狩猟、家畜化された個体との交雑により、個体数は4000頭以下とされています。しかし、200頭ほどという推定もあり、絶滅の危機は高いとみられています。
ドゥクラングール
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サルの一種。分布域は、ベトナムとラオスの国境地帯に位置していますが、この両国では現在のところ、十分な保護下に置かれておらず、正確な個体数もわかっていません。コーヒーやゴム、カシューナッツなどの農園開発が、生息地の森を脅かしているほか、地域では昔からこのサルを伝統薬の原料とする風習があり、そのための捕獲も脅威になっていると考えられています。
コープレイ
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カンボジアの森で発見された野生のスイギュウの一種。発見当時も1.000頭ほどしかいないといわれるほど数の少ない動物でした。その後も内戦や政治的な混乱によって生息地の森が破壊されたこと、兵士などの食糧として捕まえられたことにより減少。写真や映像も数えるほどしかなく、「幻の動物」とされており、絶滅してしまったと考える研究者もいます。
新種発見!
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2018年12月、WWFはメコン川流域での生物調査の結果、2017年に157種もの新種の発見を発表しました。WWFが調査を開始した1997年以降、2017年までの間に発見された新種は、なんと計2,681種!メコン地域では、インドシナトラやアジアゾウラなど絶滅の恐れのある動物たちだけではなく、世界でこの地域にしか分布していない固有種も生息しています。もしかすると、まだ見ぬ新種も...?
メコンでのWWFの活動
失われつつあるメコンの森。その豊かな森には、「今」保全をしなければ絶滅に向かってしまう、希少な野生動物が生息しています。
WWFジャパンは、メコン地域の森を守る活動を国境を越えて行っています。
プロジェクトの情報はこちらから