メコン川流域で157種の新種発見!最新報告書発表
2018/12/12
東南アジアを流れる大河メコン川の豊かな生物多様性
チベット高原から南シナ海まで4,000km以上を流れる、東南アジア最長を誇る大河メコン川。
カンボジア、中国、ラオス、ミャンマー、タイ、ベトナムの6つのインドシナ半島の国々に広がる流域には、サバンナから熱帯雨林、山間の急流から広い川幅を持つ本流の流れまで、多様な生態学的景観が存在し、生物多様性の宝庫としても知られています。
メコン地域では、世界でこの地域にしか分布していない固有種も多く、また、インドシナトラやアジアゾウ、サオラなど絶滅の恐れのある動物たちも多く生息し、WWFは世界的に重要な生態系のとして保全活動を進めている地域でもあります。
これまでに発見された種は計2,681種
これまでに、この地域では多くの新種が発見されてきました。
そして、このたびWWFが2018年12月12日に発表した報告書『New Species on the Block』で、新たに157種が発見されたと発表しました。
これは、2017年の1年間にカンボジア、ラオス、ミャンマータイ、そしてベトナムのメコン川流域で行った生物調査の結果です。調査の結果、新種として確認された種(一部亜種含む)は、哺乳類3種、魚類23種、両生類14種、爬虫類26種、植物91種の計157種になります。
これでWWFが調査を開始した1997年以降、2017年までの間に発見された種は合計2,681に上ります。
ジェダイマスターや*NSYNCメンバーなど、ユニークな由来がある生き物も!
今回、発表された新種の中には、映画スターウォーズのジェダイマスターのように長い時間を経て新種と認定されたことから名が付いたテナガザル(学名:Hoolock tianxing)や、バンド*NSYNCのメンバーであるランス・バス氏の髪型に似ている特徴を持ったコウモリ(学名:Murina hkakaboraziensis)や、霧深く苔で覆われ、湿度の高い、まるで中つ国の“エルフの森”のような森に生息するカエル(学名:Ophryophryne elfina)など、ユニークな由来がある生き物もいます。
メコンの地域に迫る開発の波
しかし、こうした明るい知らせの一方で、近年メコン川流域では、急激な経済成長に伴い、道路や鉄道、ダム建設などインフラ開発による環境破壊も深刻化もしています。
このまま開発が続けば、2030年までにまとまった規模の森はほとんど失われてしまうとの予測すらあります。
特に大きな要因の一つとなっているのが、天然ゴム農園の拡大です。天然ゴムの生産量の約7割がタイヤに使用され、日本も多く輸入をしている国のひとつとなっています。
世界のタイヤ・自動車業界が多くある日本も、森を破壊しないよう配慮して生産された天然ゴムの調達などの協力を市場という側面から貢献できる可能性があります。
WWFアジア太平洋地域自然保護室長のスチュアート・チャップマンは、今回の報告書の発表に際して、
「今後も環境に配慮のない急激な開発による自然の消失が続けば、まだ科学的に発見されていない多くの生き物たちが発見されないまま姿を消してしまう可能性もあるであろう」
とコメントをしています。
今後もこの流域で未知の生き物たちが更に発見される可能性もあり、WWFはこれからも、この希少な野生生物や自然環境の保全と、持続可能な開発を目指した取り組みを支援してゆきます。
地球から、森がなくなってしまう前に。
森のない世界では、野生動物も人も、暮らしていくことはできません。私たちと一緒に、できることを、今日からはじめてみませんか?