報告書「アセットオーナー向けのWWF リソースガイド(日本語版)」を発表
2022/01/12
アセットオーナーが考慮すべき気候変動対策
パリ協定と、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が発表した1.5℃特別報告書は、気候変動による最悪の事態を回避するために、温室効果ガスの排出量を早急に削減する必要がある、という国際的なコンセンサスを確立しました。
また、2021年にイギリスのグラスゴーで開催された国連の気候変動枠組み条約会議COP26でも、世界の気候変動対策の目標が、事実上「1.5度」に改められました。
世界の経済、金融は今後、この「1.5度」の達成と、脱炭素社会の実現に向けて、大きく舵を切ることになります。
しかし現在のところ、投資の大きな流れは、こうした世界の気候変動対策の目標達成に向けた動きと、必ずしも整合していません。
WWFの調査(2018年)によると、年金基金などのアセットオーナーの上場株式や社債のポートフォリオは、いまだパリ協定の目標達成に整合していないことが指摘されています。
気候変動対策の目標と整合していないことは、アセットオーナーにとっても、重要な課題です。
なぜなら、パリ協定の目標が達成されなければ、異常気象などによる被害が拡大し、アセットオーナー自身が、気候関連の財務リスクにさらされることになるからです。
WWFからアセットオーナーへの提言
一方で、パリ協定の目標と整合した投資を行ない、公正な移行に貢献する必要性を認識するアセットオーナーも増えています。
資産運用会社に指示を与え、資産の運用方針を左右する立場にあるアセットオーナーは、金融システムにおいて独自の地位を占めています。
つまり、アセットオーナーが気候変動問題に対して高い関心を持ち、解決に向けた信念や目標を定めるならば、すべての資産はその解決に活かされる形で管理されることになるからです。
また、アセットオーナーが、実際にこうした取り組みを望むのであれば、そうした資産運用を行なうことのできる、経験豊富な資産運用会社を選定することが重要になります。
そこで、WWFは「アセットオーナー向けのWWFリソースガイド:資産運用会社の選定、任命、およびモニタリング」の日本語版を公表しました。
これは、アセットオーナーが資産運用会社を選ぶにあたり、各社の気候パフォーマンスを評価するために利用できる、既存のガイダンスや各種のネットゼロに関する投資家のイニシアチブなどの概要を説明したものです。
またこの中では、アセットオーナーによる資産運用会社とのエンゲージメントや、その選定に既存の情報が、どのような形で利用できるのかについても、提言をまとめています。
世界の金融を、気候変動対策を促進し、サステナブルな社会を実現させるものに変えていくため、WWFはこの報告書を作成しました。
金融機関の関係者、特に年金基金などのアセットオーナーの皆さまには、ぜひご活用いただければと考えております。