ヒョウの命を支える森、その広さ


※2023年6月26日をもって、WWFロシア(Vsemirnyi Fond Prirody)はWWFネットワークから離脱しました。

広報の佐久間です。
6月に発行予定のWWFの会報『地球のこと』2016年夏号では、極東ロシアで取り組んできたアムールヒョウ保全プロジェクトのご報告をする予定です。

その準備を進める中で、こんな数字に出会いました。研究者たちが1頭のメスのアムールヒョウに発信器をつけて調査したところ、その行動範囲は161.7平方キロあった、というのです。

これは、埼玉県の熊谷市の面積とほぼ同じ。東京23区で最も広い大田区が60平方キロ、大阪市で最大の住之江区が20平方キロであることを考えると相当な広さです。

ヒョウは、オスもメスも、同性の他のヒョウが立ち入るのを嫌う「排他的行動圏」=ナワバリを持っています。

そして、メスのヒョウのナワバリは、子どもを生んで独り立ちさせるまでに必要な獲物が確保できる範囲を意味しています。

つまり、熊谷市と同じ広さの森で生きていけるのは、一頭のメスのヒョウとその子供たちくらいなのだ、ともいえます。

しかも、調査対象となったメスの行動圏は、比較的、獲物がとりやすい地域なのだそうです。

となると、草食動物が少ない地域であれば、もっと広いナワバリが必要となることでしょう。

さらに、オスのヒョウは、1頭が複数のメスのナワバリと重なるような、広大なナワバリを持っている...

そんなふうに考えていくと、アムールヒョウという動物が命をつないでいくのに必要な森の、あまりの広さに圧倒される思いがします。

アムールヒョウは現在、最大でも80頭が生き残るのみ。

それでも、約10年前には30頭前後だったことを考えれば、回復の兆しが見えてきている状況です。

今後、さらなる個体数の回復をめざすためにも、彼らの命を支える森の保全がいかに重要か。改めて確認させられた気がしています。

極東ロシアで森の保全に取り組むスタッフたち

アムールヒョウのねぐら。こうした場所を中心に、調査活動が行なわれています。

表紙は岩合光昭さんの動物写真です!

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マーケティング室(会報担当)
佐久間 浩子

WWFではずっと「伝える」ことに携わってきました。今は会報を担当しています。

なにごとも決めつけてはいけない。知ったつもりになるな。複雑なものを、複雑なまま受け止める覚悟を持て。想像力を磨き、ヒトの尺度を超える努力をせよーー動物や植物に教えられたことを胸に、人と自然の問題に向き合い続けたいと思います。

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