野生のトラはわずか4,000頭、では飼育されているトラは?
2017/04/10
先日、インドシナトラの嬉しいニュースについてお伝えしたばかりですが、今度はトラ牧場に関するショッキングなニュースが届きました。
2016年4月のデータでは、野生のトラの個体数は約4,000頭。
一方、飼育個体は米国だけで5,000頭、アジア全体では7,000頭以上と推定されています。
特にアジアでその多くがいると考えられているのが、主に観光客向けの見世物やペットとして、また毛皮や肉、骨を食用や薬用にするため、商業目的でトラを飼育繁殖している「トラ牧場」です。
「牧場」のトラは、野生での生き方も知らず、放せる場所も確保されていないため、数が増えても野生のトラ保護にはつながりません。
むしろ、飼育繁殖させたトラの売買は、トラ製品への需要を大きくし、野生個体の密輸や密猟を助長するおそれがあります。
このため、「ワシントン条約」では、飼育繁殖されたトラについても、国際取引を厳しく規制していますが、それでも密輸などの違法行為は後を絶ちません。
昨年、私たちトラフィックが発表した報告書でも、アジアで2012~2015年に実際に押収されたトラおよびトラ製品の少なくとも30%が、飼育繁殖によるトラのものと判明。
また、違法取引にタイから、ラオス、を通ってベトナムへ伸びる取引ルートが多く利用されていること、そして、この3カ国ではトラ牧場が増えていることもわかりました。
この状況を受け、昨年のワシントン条約の会議では、ラオスが取引の規制管理が不十分と指摘され、その後同国は自国のトラ牧場の段階的な廃止を発表。
タイも悪名高いトラ寺院を取り締まるとともに、全ての繁殖施設の調査を誓約しました。
各国が約束を守り、野生のトラが守れるように、私たちも各国の動きをチェックしながら、関係国政府への働きかけを続けていきたいと思います。(トラフィック 若尾)