WWFスタッフの名前がついた島
2012/12/19
自然保護室の前川です。
小笠原諸島や間宮海峡のように、人名が地名の由来になることがあります。
先日福岡市を訪問し、NPOふくおか湿地保全研究会の活動現場を、福岡市港湾局の職員の方と視察した時のこと。多々良川河口に「WWFスタッフの名前がついた島」があるという話を聞きました。その名も「スミス島」。
英語の名前ですから、日本のスタッフではありませんし、島といっても元々は川岸とつながっていた小さな中洲で、島と呼ぶには違和感も…
この多々良川、渡り鳥の渡来地として有名な和白干潟に近接する河川で、クロツラヘラサギやシギ・チドリが多数飛来します。湿地保全研究会はここで綿密な調査を行ない、福岡湾で渡り鳥の生息地を確保するための検討を重ねてきました。
その結果、湾内で進んでいた埋立事業が完了すると、水鳥の休息場所が不足することが判明したのです。
そこで県と協議の上、中洲のアシの一部を刈り取ったり、止まり木を設置したところ、目論見は見事に成功。多くの水鳥が利用し始めました。
そして河川改修のために土砂の一時保管場所となった州を、満潮時の鳥たちの休息場とするため、人が容易に近付けないよう、土砂の撤収の際に川岸から切り離し、「島」にしてもらいました。
これを湿地保全研究会に提案したのが、WWF香港でクロツラヘラサギ保全を担当するベナ・スミス氏。そうです、スミス島の由来となった人物です。
スミス氏と湿地保全研究会の出会いは2009年、福岡で開催されたクロツラヘラサギのワークショップでした。その後、継続的に情報交換を行ない、島ができるに至ったのです。
「スミス島」はまだ、ごく一部の人の間での呼び名に過ぎません。それでもこの島は今、渡り鳥たちの立派な休息場所になっているとのことです。