野生動物の数を調べる
2014/07/23
「この動物は絶滅しそうだ」と聞くと、「あと何頭、残っているの?」と聞きたくなりますよね。でも実は、野生動物の数を調べるのって、とても難しいんです。
たとえばトラ。
赤ちゃんが生まれる時期以外は、オスもメスもほとんど1頭で暮らすことが知られています。
限られた範囲なら、1頭ずつ、特徴を把握しながら数えられるかもしれませんが、広く深い森で木や岩の陰に見え隠れするトラを実際に数えるのは、まず不可能。
しかも、それが何か国もとなれば、気が遠くなるほどです。
そのため野生動物の数は、調査や計算による「推定値」である場合がほとんどです。
たとえば、縄張りを持つトラのような動物なら、生息域全体と1頭あたりの縄張りや行動範囲の広さから、大まかな数字を割り出すことができます。
これに、オスとメスの縄張りの広さの違いや、生息に適した場所の割合など、さまざまな要素をふまえて推定値を出すわけです。
一方、ツキノワグマのように縄張りを持たない動物や、昆虫のような小さな動物、また海の生きものなどは、そうはいかないため、より推定が難しくなります。
それでも、野生動物の数を推定するのはとても重要です。保護区をつくるなどを設立する際に、絶滅の危機にある動物の個体数を数字で示せれば、その重要性がより理解してもらえる可能性が高まるからです。
たとえ推定値でも、それがさまざまな保護活動の出発点になるのはよくあること。その把握のための調査は、現場でもっとも大事な取り組みの一つと言えるかもしれません。
海外の厳しい自然環境の中で、そうした活動に取り組む現地のスタッフたち。彼らを日本から応援することも、私たちの大事な仕事の一つです。(広報室・佐久間)