ラムサール会議での、日本の市民グループの活躍


自然保護室の安村です。ルーマニアのラムサール会議(COP11)から帰ってきました。

今回のCOP11には、150以上の締約国から1,000名以上が参加していたのですが、そのうち日本からの参加者は100名以上。展示ブースの出展も、実に4割を日本が占めていました。

政府、自治体、市民グループの活発な連携によって、ラムサール条約への新規登録を祝うサイドイベントを、COPで行なったのも日本だけ。この参加の多さと質の高さは、日本という国がどれだけ湿地環境の保全を理解し、真剣に取り組んでいるかの表れともいえるでしょう。

本会議の決議でも、市民グループの活躍がありました。水田と殺虫剤に関する決議案(DRXI.15)についての動きです。

水田はラムサール条約では、立派な「湿地」の一つに区分されていますが、この決議案は、農業的な視点で、水田に害虫抑制の仕組みや技術を導入しよう、というものでした。

実は、NPOラムサール・ネットワーク日本(ラムネット)をはじめとする日本の市民グループは、この決議案の内容と成立をとても心配していました。

「害虫」とはいえ、それも生物多様性の一部であること。また、殺虫剤の軽減と引き換えに、遺伝子組み換えを行なった稲の導入が、将来的に進んでしまう危険性があるからです。

そうした懸念が、締約国や関係者に十分に周知されないまま、決議案の審議が進まないように、日本の市民グループは、水田の生物多様性の向上に関する環境省の報告書作成に協力するなど、精力的な活動を展開してきました。

そして、ラムネットの皆さんが、現地で開催した水田の湿地としての役割に関するサイドイベントでの情報発信が功を奏し、決議案の改訂作業も、市民グループが主張した点がほぼ反映される形で進められました。

私もこうした市民グループの懸念やアクション、日本政府の方針、争点になりそうなポイントを、WWFの仲間たちに逐一伝え、その反応をラムネットと共有しましたが、国際会議での日本の市民グループの情報収集力、行動力、組織力は、着実に向上していると、多くの皆さんが実感されているようです。私もとても勉強になりました。

 

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自然保護室長(淡水・リーダー開発・PSP)
安村 茂樹

修士(生物化学・早稲田大学)
サンゴ礁センター駐在時に地域住民主体の環境調査を立ち上げ(現在も石垣島、久米島で継続中)。南西諸島域にて、多分野の研究者と協働した野生生物有害化学物質汚染調査、生物多様性評価調査を指揮。GIS手法を用いた保全重要域図は生物多様性条約で示されたEBSAに、野外調査ではオキナワトゲネズミ再発見や久米島沖のサンゴ大群集発見に寄与。UNEP/GEF黄海プロジェクトと連携した日中韓湿地保全活動をリードし、2020年より緊急支援や淡水・教育活動に関わる部門を統括。

沖縄のサンゴ礁と森、中国・韓国の干潟の保全に従事。国際会議でサイドイベント主催やロビー活動をする機会をいただきました。国際、環境、NGO-この3ワードが合わさるWWFで、何をすべきか考え、その仕事の醍醐味を実感し、行動する。そんな機会を一人でも多くのスタッフに提供したいです。晴れの日に気が向いたら、自転車で通勤し、休みは、川でカヌー漕いでいます。

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