「損失と損害」とチョコレート


ポーランド・ワルシャワでの国連の温暖化会議(COP19)が2週目を迎えた18日の朝。

会議場に着くと、板チョコを手渡されました。

ドイツの団体が販売しているもので、収益は、世界各国での植林活動にあてられているとのこと。

気候変動と闘うエネルギーを補給し、国際交渉を明るく変える「チェンジ・チョコレート(変化を起こすチョコレート)」だそうです。

今回の会議には、まさにこのチョコレートが必要とされるような、大きな課題「損失と損害」があります。

これまでの国際交渉は、気候変動を抑える「緩和」と、その被害を軽減する「適応」の2本柱でした。

しかし、それでも温暖化は進行し、被害の規模もさらに拡大すると予想されています。

そこで、気候変動の影響を大きく受けている途上国は、この「損失と損害」を「緩和」と「適応」に次ぐ第3の柱として確立し、そのための国際メカニズムの設立を強く求めてきました。

そして昨年のCOP18の場で、これについての独立した組織を今年のCOP19で立ち上げることが合意されたのです。

しかし、方法論をめぐって、先進国と途上国の意見は対立しています。

WWFは国際NGOのアクション・エイド、ケア・インターナショナルとともに、COP19の開催に合わせて報告書を作成し、記者会見やサイドイベントを行なうなど、早急な国際メカニズムの設立を訴えてきました。

「損失と損害」は、各国の温暖化対策や取り組みのための資金が十分でなく、影響を予防できなかったため、生じた課題です。

いまだに対策に後ろ向きな国々が、この問題に真剣に取り組み、COP19を成功に導いてくれるように。

議論を加速させ、変化を起こしてくれるように、「チェンジ・チョコレート」にも期待したいところです。(温暖化担当:小西)

■関連情報

チェンジ・チョコレート

「損失と損害」をめぐる記者会見で話すWWFインターナショナルのサンディープ・ライ「いまも大地が失われ、人命が奪われている。これ以上の被害を防ぐには、大幅な排出削減が必要だ。まだ時間があると思うのは大きなまちがいだ。われわれには一刻たりとも無駄にできる時間はない」

WWF等が発表した「気候変動の現実と闘う」と題した損害と損失に関する報告書

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専門ディレクター(環境・エネルギー)
小西 雅子

博士(公共政策学・法政大)。米ハーバード大修士課程修了。気象予報士。昭和女子大学特命教授、京都大学院特任教授兼務。
中部日本放送アナウンサーなどを経て、2005 年に国際 NGO の WWF ジャパンへ。専門は国連における気候変動国際交渉及び国内外の環境・エネルギー政策。2002 年国際気象フェスティバル「気象キャスターグランプリ」受賞。環境省中央環境審議会委員なども務めている。著書『地球温暖化を解決したい―エネルギーをどう選ぶ?』(岩波書店 2021)など多数。

世界197か国が温暖化対策を実施する!と決意して2015年に国連で合意された「パリ協定」の成立には感動しました!今や温暖化対策の担い手は各国政府だけではなく、企業や自治体・投資家・それに市民です。「変わる世の中」を応援することが好きな小西です♪

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