世界の温暖化対策をリードするビジネス界からのメッセージ


温暖化問題担当の池原です。

現在、パリで開催されている国連の気候変動会議「COP21」で、各国の政府代表がしのぎを削る中、ビジネス界から明るいニュースが飛び込んできました。

世界の産業界が、温暖化防止に向けて強いリーダーシップを発揮することを明らかにした発表が、パリで行なわれたのです。

その内容は、科学と整合した、企業による温室効果ガス排出削減目標の設定を推進するイニシアチブ「Science Based Targets(SBT)」の下、新たに世界の114の企業が、それぞれ目標の設定にコミットする、というものでした。

SBTは、WWFおよびCDP(*)、国連グローバル・コンパクト、WRI(世界資源研究所)による共同イニシアチブで、参加企業の中には、ソニーやコカ・コーラなど、すでにこうした削減目標を設定し、その承認も取得している企業も10社あります。これからのビジネス界に先んじた、確かな一歩です。

またこの発表で、SBTは2015年末までの目標としてきた「世界100社の参加」を、見事に実現しました。

COP21会場内では、産業界も温暖化対策に積極的に取り組む姿勢を発信しています。

会場内のコピー機は、日本気候リーダーズ・パートナーシップに参加しているリコー製。後ろのパネルには、同社がグループ全体のCO2排出量を2050年までに2000年比で87.5%削減するという目標を掲げていることが書かれている。

世界の温室効果ガスの排出量の95%以上に相当する国々は、今回のCOP21までに、自国の削減目標を提出しました。が、残念ながらこれはまだ不十分です。

気候変動の深刻な被害を防ぐためには、地球の平均気温の上昇を「2度未満(産業革命前と比べ)」に抑えることが必要とされていますが、この世界の削減目標は、全て足し合わせても、それを実現するには不足しているのです。

そうした中で、多くの企業が明らかにした今回の意志は、「パリ合意」に向けたCOP21の交渉を励ますものとなるでしょう。

今回の114社の排出量は合計で約5億トン。世界の排出量の約1%に相当します。

2018年までに250社の参加を目指すSBTに、今後さらに多くの企業が参加することを、そして、COP21がその成功を勝ち取ることを、期待したいと思います。

COPの主役は、決して各国政府だけではありません。こちらは自治体主導で温暖化対策を行なう「首長の盟約」のサイドイベント。7日には世界の1,000の市長が2050年までに100%再エネを宣言しました。

現地ではWWFも連日、メディア向けの発信やサイドイベントに取り組んでいます。WWFインターナショナルは8日、スウェーデンのオーサ・ロムソン副首相兼環境・エネルギー大臣を招いて再生可能エネルギーの拡大をテーマにしたサイドイベントを開催しました。

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気候エネルギー・海洋水産室 気候変動・エネルギーグループ
池原 庸介

修士(応用化学、環境マネジメント)
自動車メーカーで環境関連業務に従事した後、英エディンバラ大学大学院で気候変動の研究に従事。2008年にWWF入局。Science Based Targets(SBT)や企業の温暖化対策ランキングプロジェクトなどを通じ、企業の気候変動戦略・目標の策定を支援。公害防止管理者(大気一種)。グリーン電力証書制度 諮問委員。法政大学人間環境学部 非常勤講師

1990年代に環境問題と出会って以来、仕事や研究で環境に携わってきました。気候変動は、人間の暮らしにも生物多様性にも様々な影響を及ぼす世界共通の問題です。企業と協働しながら、脱炭素社会の実現に取り組んでいきたいと考えています。

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WWFは100カ国以上で活動している
環境保全団体です。

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