© Y.Sato/WWF Japan

COP29が開幕~すべては1.5℃目標のために


11月11日、アゼルバイジャンの首都、バクーで、国連気候変動枠組条約第29回締約国会議(COP29)が開幕しました。

 今回のCOPでも多くの議題について議論が行われますが、主要な議題は3つあります。
 まず、途上国が気候変動対策を行うために必要な気候資金の新しい数値目標を決めること。そのため、化石燃料から脱却に合意した昨年のCOP28が「エネルギーCOP」と言われたように、今年のCOP29は「資金COP」と呼ばれています。
 そして野心的な2035年の削減目標提出に向けた機運を醸成すること、さらにカーボンマーケットのパリ協定ルールを決めることです。

 一見すると関連のない別々の議題のように見えるこれらの論点は、いずれもパリ協定がめざす1.5度目標の実現に欠かせない要素であり、相互に深く結びついています。

 たとえば、2025年以降の気候資金の金額が多くなるほど、途上国の気候変動対策を強化することができ、1.5度目標を実現する可能性が高まります。さらに、これまで交渉が難航してきたパリ協定6条のカーボンマーケットのルールは、民間企業の力を、パリ協定実施の中に取り込む可能性を秘めています。

 つまり、すべての議題は世界の気候変動対策を強化することによって、1.5度目標を達成する可能性を高めることにつながるのです。

COP28のジャベル議長から、COP29の議長に選出されたアゼルバイジャンのババエフ議長に、議長の権限を示す木槌が手渡されました。これまで「歴史的な合意」を採択してきた木槌が、今年もまた実りある合意に導くことが期待されます。
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COP28のジャベル議長から、COP29の議長に選出されたアゼルバイジャンのババエフ議長に、議長の権限を示す木槌が手渡されました。これまで「歴史的な合意」を採択してきた木槌が、今年もまた実りある合意に導くことが期待されます。

 こうした重要な議題の合意をめざすCOP29は、波乱の幕開けとなりました。
 予定どおり開会式が開催され、新議長に選出されたアゼルバイジャンのムスタフ・ババエフ環境・天然資源大臣の演説が終わった後、開会式が中断されたのです。8時間後の午後8時に再開された会議が終わったとき、時計は夜10時を回っていました。

 8時間にわたって会議が中断されたのは、この会議の「議題の採択」をめぐる議論が紛糾していたからです。
 再開された開会式では、ババエフ議長が次々と議案を採択していきました。このうち、これまで2年にわたって先送りされてきたパリ協定6条のカーボンマーケットのルールだけは採択されましたが、その内容は課題を残すものとなりました。

 深刻化する気候危機を解決するために、無駄にできる時間はありません。これからは各国が対立を乗り越え、採択された議題を建設的に話し合い、会議を成功に導くことが求められています。

 明日から2日間にわたってリーダーズサミットが開催されます。世界が注目するこの会議で、各国首脳からの意欲的な気候エネルギー政策が聞けることを期待したいと思います。

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自然保護室(気候・エネルギー)
田中 健

修士(理学・九州大学)
福岡県庁、経済産業省で廃棄物管理やリサイクルなどの環境保全行政に従事、日本のリサイクル企業の海外ビジネス展開を支援。その後、日本科学未来館にて科学コミュニケーターとして、国内外の科学館、企業、研究機関などと連携し、科学技術や研究者と一般市民をつなぐ様々なプロジェクトを担当。2018年8月から現職。気候変動イニシアティブ(Japan Climate Initiative: JCI)等、企業や自治体など非国家アクターの気候変動対策の強化に取り組む。

子どもの頃から、自然や生き物の「なぜ?」を探るのが好きでした。自治体や国で環境保全に10年取り組むも、「もっとたくさんの人に環境問題を伝えたい!」と思い、一念発起。科学館スタッフとして環境・社会・教育など様々な分野のプロジェクトを通じて科学コミュニケーションの経験を積み、WWFへ。これまでの経験をまとめて生かし、地球温暖化という大きな課題にチャレンジ精神で取り組みます。

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WWFは100カ国以上で活動している
環境保全団体です。

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