「アメリカは後退させない」


アフリカのモロッコ、マラケシュより温暖化担当の小西です。

国連気候変動会議COP22は、閣僚級会合の2日目に入り、各国の環境大臣の演説が続けられています。

午後に登壇した日本の山本環境大臣も、「政治のリーダーシップが今以上に重要となることを実感している。日本は相応の責任を果たしていくことを約束する」とするスピーチを行ないました。

また今日は、アメリカの動きが大きく注目された日でもありました。

アメリカ政府がカナダとメキシコとともに開催した、長期低炭素計画の発表会場。つま先立ちしてみる人も多くいるほど人垣で埋まった。

アメリカ政府はまず、メキシコとともに、世界の先陣を切って、2050年までの「長期低炭素開発戦略」を国連に提出しました。

パリ協定が各国に対し2020年までに策定を求めている、この長期的な温暖化防止計画。

それを、協定成立から1年足らずで提出したアメリカとメキシコの両国は、具体的な長期計画を持つ初めての国になったのです。

アメリカのケリー国務長官のスピーチ

ケリー国務長官の記者会見にも、世界の関心が集まりました。

「昨年のパリで、世界が一つになり、決定した温暖化防止の政策を、アメリカは後退させない。

世界の経済市場はすでに低炭素化の方向へ大きく動いている。この力強い潮流が後戻りすることはない」

その力強い演説は、取材する記者たちの拍手によって何度も中断されました。

また、アメリカ国内365の企業や投資機関も、オバマ大統領とトランプ次期大統領に対し、パリ協定の参加を継続し、国内外で低炭素経済をいっそう加速させるよう求める声明を発表。

365社の企業による声明の発表を受けて開かれた記者会見。代表して登壇したマース社の幹部は、「企業活動は長期的なビジョンの下に行なわれる。政権交代という短期的な政治の変化で、脱炭素をめざす企業の方針がゆらぐことはない」と、産業界の方針は不変であることを強調していました。

ギャップやナイキ、ホテル業のヒルトン、食品メーカーのケロッグやマースなど、日本でもなじみのある会社も名を連ねた365社は、脱炭素をめざす産業界の方針が不変であることを強調しました。

パリ協定の採択から発効まで、世界の気候変動政策を牽引してきたアメリカ。

そのリーダーシップが、多くの米産業界やメディアからも支持されてきたことがよくわかる1日でした。

COP22終了まであとわずか。各国の動きに注目です!

砂漠を再生エネルギーの発電所に変え、脱炭素経済をめざすアラブ首長国連邦の展示。産油国も脱炭素の道を歩もうとしている。

関連情報

現地より動画配信中!

COP22会場より、WWFジャパンのスタッフが現地の様子をお届けしています。

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専門ディレクター(環境・エネルギー)
小西 雅子

博士(公共政策学・法政大)。米ハーバード大修士課程修了。気象予報士。昭和女子大学特命教授、京都大学院特任教授兼務。
中部日本放送アナウンサーなどを経て、2005 年に国際 NGO の WWF ジャパンへ。専門は国連における気候変動国際交渉及び国内外の環境・エネルギー政策。2002 年国際気象フェスティバル「気象キャスターグランプリ」受賞。環境省中央環境審議会委員なども務めている。著書『地球温暖化を解決したい―エネルギーをどう選ぶ?』(岩波書店 2021)など多数。

世界197か国が温暖化対策を実施する!と決意して2015年に国連で合意された「パリ協定」の成立には感動しました!今や温暖化対策の担い手は各国政府だけではなく、企業や自治体・投資家・それに市民です。「変わる世の中」を応援することが好きな小西です♪

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