地球沸騰化?史上最も暑い7月


7月27日、世界気象機関(WMO)は、今年7月が「観測史上最も暑い月となる可能性が「極めて高い」と発表しました。

月内の残りの日数で、過去の記録を下回ることは、事実上不可能だそうなので、記録更新はほぼ確定。

WMOは同時に、気候変動の影響による異常気象が干ばつや洪水などの災害を増加させており、水や食料の安全保障、そして生態系にも影響を及ぼす可能性があると警告。

特に、アジアはその被害が大きいとされ、2022年の1年間だけで、洪水や暴風雨などの水害を伴った気候・気象関連の災害が81件も発生しました。

©WWF Pakistan

1,500人以上の死者を出した、パキスタンの大水害。WMOによれば、アジア全体では2022年の1年間、同様の災害によって、5,000万人以上が被災し、5,000人が亡くなったといいます。

また、アジア地域以外でも、水や雨の不足による山火事の大規模化、長期化が生じるなど、気候変動に伴う異常気象の影響は、年々深刻化しています。

気候変動のもたらす脅威は、洪水や渇水、干ばつなど、水に関連したリスクを大きく増幅してしまう点にある、ということです。

今回の発表を受け、国連のグテーレス事務総長は、「地球沸騰化」の時代が来た、と発言されたそうですが、これは各国に対し、温暖化防止策の強化を求める訴えであると同時に、水をはじめ、気候変動に関連したさまざまなリスクへの対策の必要性を指摘するものといえるでしょう。

© Andrew Merry / Getty / WWF

2019年から翌年にかけて発生したオーストラリアの火災。17万平方キロ以上(北海道の倍以上面積)が焼亡し、森の自然はもちろん、多くの人々の暮らしが危機にさらされました。被害が拡大した背景には、異常気象による干ばつの深刻化があります。

私たちは、二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスの排出削減を進めながら、同時に、水のリスクをおさえ、責任ある水利用管理(ウォーター・スチュワードシップ)を進めていく取り組みを行なっていかねばなりません。

健全な水の母体であり、治水や利水とも深いかかわりを持つ、流域に広がる森や湿地、湖、そして水田などの水環境の保全は、今や防災やビジネス、生活といった観点からも重要な活動です。


持続可能な社会をめざす取り組みの一環として、これからも力を入れていかねばと思います。

©Martin Harvey

東アフリカのケニアでは長く続いた干ばつが、野生動物の生息や行動に影響を及ぼしています。タンザニアではケニアから移動してきたアフリカゾウの群が、農作物や居住地に被害を出してしまう問題も起きています。

【寄付のお願い】アフリカゾウの未来のために|野生動物アドプト制度 アフリカゾウ・スポンサーズ

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自然保護室(コンサベーションコミュニケーション グループ長)
三間 淳吉

学士(芸術学)。事務局でのボランティアを経て、1997年から広報スタッフとして活動に参加。国内外の環境問題と、保全活動の動向・変遷を追いつつ、各種出版物、ウェブサイト、SNSなどの編集や制作、運用管理を担当。これまで100種以上の世界の絶滅危惧種について記事を執筆。「人と自然のかかわり方」の探求は、ライフワークの一つ。

虫や鳥、魚たちの姿を追って45年。生きものの魅力に触れたことがきっかけで、気が付けばこの30年は、環境問題を追いかけていました。自然を壊すのは人。守ろうとするのも人。生きものたちの生きざまに学びながら、謙虚な気持ちで自然を未来に引き継いでいきたいと願っています。

人と自然が調和して
生きられる未来を目指して

WWFは100カ国以上で活動している
環境保全団体です。

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