「パリ協定は死にません!」トランプ大統領の離脱宣言を受けて
2017/06/02
アメリカのトランプ大統領が、地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」から脱退する方針を発表しました。
「パリ協定」は、すべての国が温暖化対策に取り組むことを決めた画期的な国際協定で、2050年以降に世界の温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすることを目標に掲げています。
しかし、温暖化は中国のでっち上げだと公言していたトランプ大統領は、「パリ協定の下では中国は温室効果ガスの排出を増やすことが許されている。アメリカにとって不公平だ」と不満を表明。脱退を宣言したのです。
ですが、これで「パリ協定が死んだ」などと考える必要はありません。
2020年に始まる「パリ協定」は、195か国が署名し、すでに147か国が批准(参加の表明)している世界共通の国際協定。超大国とはいえ、一国の一時の政治的な揺れ動きでひっくり返すことはできません。
さらに、以下のような理由もあります。
理由1:「パリ協定」は各国政府の代表だけでなく、世界の自治体や企業、投資家、市民団体など1万を超える強力なイニシアティブによる温暖化対策宣言に支えられて成立しました。
これに参加するアメリカのカリフォルニア州(欧州の一国並みの排出量の州)やニューヨーク州などは、連邦政府よりはるかに厳しい温暖化対策を推進中。さらに1000を超えるアメリカ企業もパリ協定を支持しています。
つまり、アメリカの自治体や企業はむしろ協定推進に向けて結束し、リーダーシップを発揮しようとしているのです!
理由2:脱退するといっても、パリ協定はルールとして最初の3年間は抜けられません。また、脱退が完了するのはそのさらに1年後。すなわち4年後の2020年11月4日以降となります。つまり、アメリカの次の大統領選挙の時...です。その意味は!?
世界第2位の排出国アメリカの今回の決定は、確かにパリ協定の実効力を左右する大きな懸念材料です。抗議の意は、私たちもしっかりと伝えてゆかねばなりません。
ですが、あえて言います「パリ協定は死にません!」。これを機に、皆さんも温暖化防止をめぐる国際交渉の今後にぜひ注目してください!(温暖化担当 小西)
WWFジャパンの声明
参考書籍
世界の新しい温暖化防止の約束「パリ協定」とは何か? 1から知りたい!という方はぜひ拙著「地球温暖化は解決できるのか ~パリ協定から未来へ~」をご参照ください。