【動画あり】仔トラ、野生復帰に向けリハビリ中!


※2023年6月26日をもって、WWFロシア(Vsemirnyi Fond Prirody)はWWFネットワークから離脱しました。

自然保護室で極東ロシアの森林保全を担当している川江です。

突然ですが皆さん、世界にはトラの亜種(種をさらに細かく分類したもの)が何種類いるかご存知ですか?

答えは9亜種。

トラは、絶滅したものも含めて、生息地域ごとに9つの亜種に分類されています。そのうち、最も北に生息するのがシベリアトラ(アムールトラ)です。

母親とはぐれ保護されたシベリアトラ(アムールトラ)

このシベリアトラがすむ極東ロシアは、冬の気温がマイナス20度以下にもなる過酷な環境。

こうした中、トラは子育てをして、新たな命を育んでいますが、もし何らかの理由で仔トラが母トラとはぐれてしまったら... と考えると、絶望的な気持ちになってしまいます。

昨年12月、こうした絶望的な状況から運良く助けられた1頭の仔トラがいます。

この仔トラは沿海地方ラゾ村のゴミ捨て場に現れたところを村人に発見されました。

その後2週間、母トラがいないか観察が続けられましたが、残念ながらその姿は見当たらなかったため、政府の狩猟局は捕獲を決断。

2日間にわたる追跡の末、12月16日の早朝5時に無事保護されました。

その後の検査で、この仔トラは生後5か月、体重20キロのメスであることがわかりました。

また、足を怪我しており、衰弱しているものの幸い命に別状がないこともわかりました。

その後、今年2月には足の怪我も治り、屋外の施設で野生復帰のための狩りの訓練が始まりました。

こうした訓練では、トラが人に慣れてしまうことがないように、職員もケージ内に入ることはせず、監視カメラを使ってトラの様子を観察します。

上手く狩りの能力を身に付けることができ、専門家らによる審査で承認が下りれば、2018年の夏頃には野生に復帰できる可能性があります。

極東ロシアの担当として、こうした保護されたトラの野生復帰を、そして野生復帰したトラがくらせる森の保全をこれからもサポートしていきます。

 

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自然保護室長(森林・野生生物・マーケット・フード・コンサベーションコミュニケーション)、TRAFFICジャパンオフィス代表
川江 心一

京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科修士課程修了。
小学生の頃に子供向け科学雑誌の熱帯雨林特集に惹きつけられて以来30年間、夢は熱帯雨林保全に携わること。大学では、森林保全と地域住民の生計の両立を研究するため、インドネシアやラオスに長期滞在。前職でアフリカの農業開発などに携わった後、2013年にWWFに入局。WWFでは、長年の夢であった東南アジアの森林保全プロジェクトを担当し、その後持続可能な天然ゴムの生産・利用に関わる企業との対話も実施。2020年より現職。

小学生の頃に科学雑誌で読んだ熱帯雨林に惹きつけられると同時に、森林破壊のニュースを知り「なんとかしなきゃ!」と思う。以来、海外で熱帯林保全の仕事に携わるのが夢でしたが、大学では残念ながら森林学科に入れず・・。その後、紆余曲折を経て、30半ばにして目指す仕事にたどり着きました。今でもプロジェクトのフィールドに出ている時が一番楽しい。

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