「原子力をCDMに」との主張で日本が「化石賞」を受賞
2011/10/05
温暖化担当の山岸です。
国連の気候変動会議が開かれているパナマに来ています。
6月に開催されたドイツ・ボンの会議に続き、今回の国連気候変動パナマ会議でも、日本が化石賞を受賞してしまいました。化石賞は、国連の温暖化防止会議において、その日に最も「後ろ向きな主張」をした国に対して与えられる不名誉な賞です。
受賞の理由は前回と同じく「原子力発電をクリーン開発メカニズム(CDM)の中で認められる活動にすべし」という主張によって、です。
CDMは、京都議定書の中で認められている仕組みで、先進国が温室効果ガスの削減目標を達成する際に、途上国で行なったプロジェクトでの排出量削減を「クレジット」として得て、目標達成に加算できる、というもの。
現行のルールでは、原則的に原発はCDMのプロジェクトとして使えませんが、日本政府は以前から「原子力発電を新たにCDMのプロジェクトとして認められるようにすべし」と、主張。今の交渉の中で、そのルールを改めることを求めてきました。
そして今回、その「認められるようにする」という選択肢を、交渉されている文書から削ることを、日本はインドと共に拒否しました。
これはつまり、原発を途上国に輸出し、自国の削減目標達成に利用しよう、ということです。
福島での原発事故が、今も多くの人を苦しめ続け、事故の検証すら終わっていない中、当事国である日本がこのような主張することについて、国際的な市民社会からは、もはや困惑に近い驚きと、批判の声が挙がっています。
これを推進する人たちは、いずれにせよ原子力の拡大が進む途上国では、まだ日本の技術が入った方が安全に運用できるはずだ、と主張します。でも、その「安全神話」の驕りこそが、そもそも今回の事故を招いたのではなかったのでしょうか?
日本政府は、エネルギー政策だけでなく、こうした国際交渉での原子力の扱いについても、根本的に見直すべきです。