南アフリカでの、サッカー日本代表のように


南アフリカ・ダーバンのCOP17会場より、温暖化担当の山岸です。
ダーバンには、昨年のサッカーのワールドカップで準決勝の試合が開催されたスタジアムがあります。日本対オランダの試合が行なわれた場所です。南アフリカで開催されたW杯で、日本代表が当初の予想を覆して奮闘。日本中を熱狂させ、世界に存在感を示して、ベスト16という成績を残しました。

その1年後、世界の目はふたたび南アフリカに注がれています。しかし、京都議定書を生んだ国、日本の存在感は薄く、地球温暖化を解決するためのリーダーシップを発揮できているとはいえません。

6日から始まった閣僚級会合では、8日まで各国の環境大臣の演説が続きます。7日午前中には、日本の細野豪志環境大臣の演説がありました。細野大臣は、途上国が強く求めてきた京都議定書の第2約束期間にあらためて反対を表明したうえ、途上国に対する長期資金の資金源についても言及しないまま演壇を降りました。

地球温暖化に歴史的責任を負う先進国としての責任を果たすことなく、途上国を含めた包括的な枠組みを求めるといっても、説得力はありません。

また、京都議定書の第1約束期間が終わる2013年以降も温暖化対策に努力すると発言しながら、温暖化防止の努力の裏づけとなる温暖化対策基本法さえ制定できていないことはよく知られています。

細野環境大臣がダーバンに到着してから演説を行なうまでには、ダーバンに参集した国々、世界の市民の声に耳を傾ける時間があったはずです。しかし、残念なことに、7日のハイレベル・セグメントでの演説の内容は、日本政府の従来の立場を変えるものではありませんでした。

サッカー日本代表を率いた岡田武史監督のリーダーシップは高い評価を得ました。残された時間はわずかですが、日本の政府代表と細野大臣には、後世の歴史の評価に耐える決断が期待されます。

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「愛があれば約束できる」と京都議定書第2約束期間の合意を訴える

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「COP17で京都議定書第2約束期間に合意しよう」と合唱する若者たち

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7日の細野環境相のスピーチ。国際NGOがプレゼントしたネクタイは着用されず

 

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自然保護室長(気候エネルギー・海洋水産・生物多様性・金融)
山岸 尚之

立命館大学国際関係学部に入学した1997年にCOP3(国連気候変動枠組条約第3回締約国会議)が京都で開催されたことがきっかけで気候変動問題をめぐる国際政治に関心を持つようになる。2001年3月に同大学を卒業後、9月より米ボストン大学大学院にて、国際関係論・環境政策の修士プログラムに入学。2003年5月に同修士号を取得。卒業後、WWFジャパンの気候変動担当オフィサーとして、政策提言・キャンペーン活動に携わるほか、国連気候変動会議に毎年参加し、国際的な提言活動を担当。2020年より自然保護室長。

京都議定書が採択されたときに、当地で学生だったことがきっかけでこの分野に関心をもち、大学院を経てWWFに。以来、気候変動(地球温暖化)という地球規模の問題の中で、NGOがどんな役割を果たせるのか、試行錯誤を重ねています。WWFの国際チームの中でやる仕事は、大変ですがやりがいを感じています。

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環境保全団体です。

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