投票するかを、投票で決める!?(ラムサールCOP11より)


ルーマニアのラムサール条約会議場より、自然保護室の安村です。

各国が提出した21の「決議案」の審議が始まりました。最初の決議案は、「今後のラムサール条約事務局の所管について」。過去7年にわたり議論が続いている課題です。

条約事務局は現在、IUCN(国際自然保護連合)に置かれていますが、UNEP(国連環境計画)に移管すべきとの声があり、今回の決議案は、A案(IUCN)とB案(UNEP)の2つが併記されています。

意見を述べたい締約国は、見解や懸念を次々に表明しますが、さすが7年モノの問題だけあってすんなりとはいきません。

そうした中、事務局が「A案、B案、どちらを支持したいか、投票(挙手)をしてほしい」と提案しました。一見、何でもないことのように思えますが、これはちょっとした事件!でした。

というのは、ラムサール条約会議では常に、各国が話し合い、交渉を通じて、合意形成を図ってきました。つまり「投票」は、異例の手段だったのです。

ですから、「投票で決を取るのは避けてほしい」とデンマーク政府代表が発言し、日本などの国々がそれを支持したことも、ある意味当然だったといえます。

条約事務局は「あくまで現時点の意向を把握する非公式なもので、決定するものではない」と説明しましたが、今後、他のセンシティブな問題についても、挙手に決を求めることになるのではないか、と懸念の声が出て、会議は中断。

再開後、事務局が提案したのは、「投票するかを、投票で決めたい」という内容でした。これは受け入れられ、結果は右の通り。続いてA、B案の投票も行なわれました。

しかし、まだ決定ではありません。これを踏まえ、事務局が改訂決議案を作成すると説明。ここまで、2時間以上くらいかかったでしょうか。

他にも、戦略計画に関する決議案の審議では、2010年に採択された生物多様性条約の愛知目標と整合をつけるための改訂や、一部の数値目標の削除、湿地の新規開発計画に対する環境アセス実施等について意見が出されました。

明日以降も審議はまだまだ続きます。

 

 

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投票の現場。「意思表示には締約国のプレートをまっすぐに掲げてください」と説明するニック・デビッドソン条約事務次長の声に応じ、各国がプレートを掲げました。

 

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自然保護室長(淡水・リーダー開発・PSP)
安村 茂樹

修士(生物化学・早稲田大学)
サンゴ礁センター駐在時に地域住民主体の環境調査を立ち上げ(現在も石垣島、久米島で継続中)。南西諸島域にて、多分野の研究者と協働した野生生物有害化学物質汚染調査、生物多様性評価調査を指揮。GIS手法を用いた保全重要域図は生物多様性条約で示されたEBSAに、野外調査ではオキナワトゲネズミ再発見や久米島沖のサンゴ大群集発見に寄与。UNEP/GEF黄海プロジェクトと連携した日中韓湿地保全活動をリードし、2020年より緊急支援や淡水・教育活動に関わる部門を統括。

沖縄のサンゴ礁と森、中国・韓国の干潟の保全に従事。国際会議でサイドイベント主催やロビー活動をする機会をいただきました。国際、環境、NGO-この3ワードが合わさるWWFで、何をすべきか考え、その仕事の醍醐味を実感し、行動する。そんな機会を一人でも多くのスタッフに提供したいです。晴れの日に気が向いたら、自転車で通勤し、休みは、川でカヌー漕いでいます。

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