何が問題?カワウソ10匹の国外持ち出し


今朝、タイの空港でカワウソを10匹、密輸しようとした日本人の女子大生が、当局に逮捕された、というニュースがありました。

「密輸」、すなわち違法な持ち出しを行なおうとしたことが、逮捕の理由となったわけですが、報道ではいずれも、問題のポイントである「何の法律に抵触したのか?」については触れられていません。

ですが、野生動物の保護に詳しい方なら、これが「ワシントン条約(CITES)」の取り決めに反する行為であったことにお気づきかと思います。

「ワシントン条約」は、絶滅のおそれのある野生生物を守るため、国同士の間で行なわれる国際取引を規制する国際法。

絶滅の危機が高い動植物については、商業取引の「禁止」も義務付けていす。

対象となるのは、生きた個体だけでなく、象牙製品や鳥の羽、キャビアの缶詰など、その生物から「派生」したものも含まれます。

カワウソの一種、コツメカワウソ。可愛いしぐさで人気者になってしまいました。

しかし厳密には、今回逮捕された理由は、「ワシントン条約」に違反したから、ではありません。

正確には、この条約に加盟するタイ政府が、条約の取り決めに対応して定めているタイの国内法に触れたためです。

多くの国同士の取り決めである国際条約は、各国でそのまま使える法律を提供するわけではありません。

各国政府がその条約の取り決めや理念に沿った法律を、自国内で整え、施行することで、初めて条約は効力を発揮するのです。

「黒い真珠」とも呼ばれるキャビア。絶滅危機種が多いチョウザメ類の卵です

今回の件では私たちもメディアの取材を受けましたが、カワウソは日本でも、近年ペットとしての人気が急騰している動物です。

こうした動物を過剰な取引から守るためにも、輸出入に関わる国がそれぞれ、自国の法律を定め、守っていくことが求められています。(トラフィック 若尾)

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自然保護室(野生生物)、TRAFFIC
若尾 慶子

修士(筑波大学大学院・環境科学)
一級小型船舶操縦免許、知的財産管理技能士2級、高圧ガス販売主任者、登録販売者。
医療機器商社、海外青年協力隊を経て2014年入局。
TRAFFICでペット取引される両生類・爬虫類の調査や政策提言を実施。淡水プロジェクトのコミュニケーション、助成金担当を行い、2021年より野生生物グループ及びTRAFFICでペットプロジェクトを担当。
「南西諸島固有の両生類・爬虫類のペット取引(TRAFFIC、2018)」「SDGsと環境教育(学文社、2017)」

子供の頃から生き物に興味があり、大人になってからは動物園でドーセントのボランティアをしていました。生き物に関わる仕事を本業にしたいと医療機器業界からWWFへ転身!ヒトと自然が調和できる世界を本気で目指す賛同者を増やしたいと願う酒&猫好きです。今、もっとも気がかりな動物はオガサワラカワラヒワ。

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