何が問題?カワウソ10匹の国外持ち出し
2017/11/01
今朝、タイの空港でカワウソを10匹、密輸しようとした日本人の女子大生が、当局に逮捕された、というニュースがありました。
「密輸」、すなわち違法な持ち出しを行なおうとしたことが、逮捕の理由となったわけですが、報道ではいずれも、問題のポイントである「何の法律に抵触したのか?」については触れられていません。
ですが、野生動物の保護に詳しい方なら、これが「ワシントン条約(CITES)」の取り決めに反する行為であったことにお気づきかと思います。
「ワシントン条約」は、絶滅のおそれのある野生生物を守るため、国同士の間で行なわれる国際取引を規制する国際法。
絶滅の危機が高い動植物については、商業取引の「禁止」も義務付けていす。
対象となるのは、生きた個体だけでなく、象牙製品や鳥の羽、キャビアの缶詰など、その生物から「派生」したものも含まれます。
しかし厳密には、今回逮捕された理由は、「ワシントン条約」に違反したから、ではありません。
正確には、この条約に加盟するタイ政府が、条約の取り決めに対応して定めているタイの国内法に触れたためです。
多くの国同士の取り決めである国際条約は、各国でそのまま使える法律を提供するわけではありません。
各国政府がその条約の取り決めや理念に沿った法律を、自国内で整え、施行することで、初めて条約は効力を発揮するのです。
今回の件では私たちもメディアの取材を受けましたが、カワウソは日本でも、近年ペットとしての人気が急騰している動物です。
こうした動物を過剰な取引から守るためにも、輸出入に関わる国がそれぞれ、自国の法律を定め、守っていくことが求められています。(トラフィック 若尾)