暗闇の中にトラがいる!?


熱帯の森の夜に、とある水辺で写された暗い一枚の写真。
このサイズではよく分からないですが、よーく見ると、中央に小さな仔トラの姿があります。水を飲みに来ているのです。

ここは、私たちが森の保全活動を行なっている、インドネシア、スマトラ島南部のバリサン・セラタン国立公園です。

写真は実は、人が撮影したものではなく、野生動物の調査用の自動カメラで撮られたもの。

赤外線のセンサーが動くものを探知すると、シャッターが下りますが、細かい調整はできないため、ピントのずれや空振りも多く、真っ暗だったり、明るく真っ白になってしまったりと、大半が散々な写真。ですが、あくまでこれは調査用ですから、何が写ってるかが判別できれば、とりあえずOKです。

今回の写真に写っているのはスマトラ島だけに生息するトラの亜種スマトラトラです。推定されている個体数は400~600頭ほど。日本列島よりも広いスマトラ島に、今これだけしか生き残っていません。

スマトラトラは、今も密猟者に狙われている一方で、かつて森だった場所では地域の住民を死傷させる事故を起こすこともあり、きわめて絶滅の危険性が高く、保護活動もさまざまな困難に直面しています。

この森で作られているコピー紙の消費などを通じて、スマトラとのかかわりが深い日本にとっても、これは他人事の問題ではありません。

自動カメラを使った調査は、これからも継続されます。来年、再来年、5年先、10年先にも、ここに森がのこり、この仔トラたちが成長する姿が見られるように、頑張ってゆきたいと思います。(広報担当:三間)

  

▼関連情報

森の中の夜の水辺。真ん中に仔トラがいます。

中心部を拡大すると...

これは別の一枚。左にお母さん?と思われるトラが写っている。

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自然保護室(コンサベーションコミュニケーション グループ長)
三間 淳吉

学士(芸術学)。事務局でのボランティアを経て、1997年から広報スタッフとして活動に参加。国内外の環境問題と、保全活動の動向・変遷を追いつつ、各種出版物、ウェブサイト、SNSなどの編集や制作、運用管理を担当。これまで100種以上の世界の絶滅危惧種について記事を執筆。「人と自然のかかわり方」の探求は、ライフワークの一つ。

虫や鳥、魚たちの姿を追って45年。生きものの魅力に触れたことがきっかけで、気が付けばこの30年は、環境問題を追いかけていました。自然を壊すのは人。守ろうとするのも人。生きものたちの生きざまに学びながら、謙虚な気持ちで自然を未来に引き継いでいきたいと願っています。

人と自然が調和して
生きられる未来を目指して

WWFは100カ国以上で活動している
環境保全団体です。

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