「ギガトン・ギャップ」は埋められるか?ADPが開幕


ポーランドのワルシャワより、温暖化担当の山岸です。

開会2日目を迎えた国連の気候変動会議(COP19)の会場では、前日、自国を見舞った台風30号の惨状をスピーチで伝えた、フィリピン政府代表のヤップ・サノ交渉官が注目されています。

「この日、サノ交渉官はCOP19の開期中、会議に実りある成果がもたらされるまで「食を断つ」と宣言。

この行動に多くの若者が同調してイベントが開催され、フィリピンへの連帯と、石油・石炭などから再生可能な自然エネルギーへの転換が呼びかけられました。

こうした世界の人たちの声が上がる中、COP19の主要な議論が行なわれるADP(ダーバン・プラットフォーム作業部会)が開幕しました。

すべての締約国は2015年に新しい国際枠組みに合意し、2020年から始動することになっています。ADPでは、1)2015年の合意の内容、2)2020年に新しい枠組みが始動するまでの取り組みが話し合われます。

気候変動の深刻な影響を回避するためには、地球の平均気温の上昇を産業革命前と比べて2度未満に抑えなければなりません。

今年11月5日、UNEP(国連環境計画)が指摘した見込みによれば、現在各国が目標として約束している温室効果ガスの削減量の合計と、気温上昇を2度未満にするために必要な削減量との差は、2020年時点で80~120億トン。

しかし、技術的にはこの大きな差(ギガトン・ギャップ)を埋めることは可能であるとされ、UNEPは各国に目標の上積みを求めています。

ADPでは、このギャップを埋めるため、各国の削減目標と行動をいかに引き上げていくかが焦点になります。

新しい国際枠組みに合意する2015年まで、あと2年。残された時間は長くありません。

「言葉だけでなく、行動を起こしてほしい」フィリピンのサノ交渉官が発した訴えに、世界の国々は応えられるか。ADPの展開が注目されます。

開幕したADP(ダーバン・プラットフォーム作業部会)

サノ交渉官を囲んでのイベント。参加者やメディアが集まり、フロアは人で埋まりました。

フィリピン政府代表のサノ氏。気候変動問題に取り組む世界の850の市民団体でつくるCANインターナショナルでは、サノ氏に初の「連帯賞」を与え、フィリピンと気候変動に脆弱なすべての国々への連帯を表明。国際社会にいっそうの削減努力を求めました。

 

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自然保護室長(気候エネルギー・海洋水産・生物多様性・金融)
山岸 尚之

立命館大学国際関係学部に入学した1997年にCOP3(国連気候変動枠組条約第3回締約国会議)が京都で開催されたことがきっかけで気候変動問題をめぐる国際政治に関心を持つようになる。2001年3月に同大学を卒業後、9月より米ボストン大学大学院にて、国際関係論・環境政策の修士プログラムに入学。2003年5月に同修士号を取得。卒業後、WWFジャパンの気候変動担当オフィサーとして、政策提言・キャンペーン活動に携わるほか、国連気候変動会議に毎年参加し、国際的な提言活動を担当。2020年より自然保護室長。

京都議定書が採択されたときに、当地で学生だったことがきっかけでこの分野に関心をもち、大学院を経てWWFに。以来、気候変動(地球温暖化)という地球規模の問題の中で、NGOがどんな役割を果たせるのか、試行錯誤を重ねています。WWFの国際チームの中でやる仕事は、大変ですがやりがいを感じています。

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